はじめに
繰り上げ返済はいつするのが得なのか?
今回のご相談者の場合、すべて世帯単位での情報のみで、ご夫婦のそれぞれの収入や、住宅ローンの割合についてはわかりませんので、仮に下記のような前提としてみます。
夫: 収入600万円、借入3000万円、変動金利0.45%、30年
妻: 収入460万円、借入2000万円、変動金利0.45%、30年
この条件で、以下の2点で比較します。
1. 借入翌年から毎年50万円の繰上げ返済を10年間実施
2. 10年経過後から毎年50万円の繰上げ返済を10年間実施
1より2の方が約19万円のプラス効果があります。しかし、もし下記のローンの組み方だと、1の方が約32万円のプラス効果になり、逆転します。
夫: 600万円、借入3000万円、固定金利1.3%、35年
妻: 460万円、借入2000万円、固定金利1.3%、35年
※収入は年2.0%上昇。金利は変動しなかった場合。効果については、所得税・住民税の削減額と繰上げ返済による利息軽減額を合わせた概算となります。
このように、ケースによって変わってきますので、より効果的な返済方法について専門家に確認すると良いでしょう。それによって返済計画も変わってきます。
保険コストの見直しにつながる「住宅ローンの保障機能」
そして、第二の特徴は保障機能です。住宅を購入する際、ほとんどの金融機関では、借入れの条件として団体信用生命保険(団信)の加入を義務付けています。これは、もし万が一死亡や所定の高度障害になった場合に、それ以降の住宅ローンの返済が免除されるというものです。
仮に3000万円のローンを組めば、3000万円の死亡保障が付くようなものなので、これまで加入していた生命保険と合わせると、死亡保障が重複し、保障が過剰になる可能性があります。生命保険を見直すことで、保険のコストを抑えることに繋がり、その抑えた保険料分を将来の繰上げ返済や教育費のための貯蓄にすることもできます。
団信は、ローン残高と連動していますので、繰り上げ返済をすることで、手元資金も保障も減少するので、繰り上げ返済する金額とタイミングが重要となります。過度な金額を繰上げ返済し、その後万が一のことがあると、手元資金的にも厳しくなることになります。
最近は、通常の団信に加え、ガンや就業不能などの特約も充実してきています。こういった保障機能も備えていることを念頭に置いた返済計画が重要となります。ご相談者は現在保険には加入されていないようですので、資産を“増やす”ことだけではなく、“守る”ことも考えていきましょう。
このように、ローンの特徴を踏まえた上で、利息軽減効果だけを考えたローン返済計画ではなく、幅広い視野で返済計画を立てる必要があります。
将来子どもを考えるなら、住宅ローンの過剰返済に要注意
そして、これからお子さまを考えているとのことで、ローンの返済だけでなく、教育費の準備も考えていかなければいけません。
お子さまは何人欲しいのか、どのような教育環境を与えてあげたいかによって、準備が必要な教育費が変わってきます。もし、現在奥様がお仕事をされており、夫婦二人の収入がある前提でローンを組んだ場合、お子様の出産によって、奥様の収入にどういう変化があるかも想定する必要があります。
現在の家計状況をみると、夫婦二人の生活にしては、毎月の生活費が高めです。今後子どもが産まれると、さらに生活費が掛かりますので、今から家計の見直しをしておくと良いでしょう。その際、将来の子どもの教育費のための貯蓄と、繰り上げ返済のための貯蓄、老後やそれ以外の貯蓄など、優先順位と時期と目的で区分けしましょう。
もし、子どもの教育費が最優先な場合、住宅ローンの返済を過剰にすることで、子どもの教育費が足りなくなってしまうことは避けたいところです。既にローンの返済はスタートしているので、必要に応じて専門家の力も借りながら、現在の状況での最適な対策を考え、実行していきましょう。