はじめに

景気の底打ちが見えてきた中国経済

米中貿易問題の進展が期待される中、中国の主要経済指標も改善の兆しを見せています。

具体的には、3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が50.5と約4ヵ月ぶりに50を上回り、3月の輸出総額(ドル建て)の伸びは前年同期比14.2%増と1~2月の同4.6%減から大きく改善しました。

また、3月の社会融資総量(実体経済へのマネー供給量)と鉱工業生産も、市場予想を大きく上回りました。これらの経済指標から判断すると、中国経済はすでに最悪期を過ぎた可能性があります。

足元の景気回復を受けて、中央銀行である中国人民銀行は4月15日に「マネーサプライを適度にコントロールし、中国経済を過剰流動性であふれさせることはしない」との声明を発表しました。

米中貿易摩擦が激化した昨年9月以降、中国人民銀行は金融機関の預金準備率を15.5%から13.5%に引き下げ、利下げの可能性も一時高まりました。しかし、今回の声明発表によって、追加緩和の可能性が後退したと思われます。

高まる香港市場の優位性

このように中国人民銀行が金融政策の微調整に動いたことは、2つの側面を通じて中国の株式市場に影響を与えることになるでしょう。

1つ目の側面は、実体経済の回復を示唆したことで、大型減税やインフラ投資などによって企業業績が上向き、1株当たり純利益(EPS)の増加と株価の上昇につながります。2つ目の側面は、金融緩和の縮小を匂わせたことで、中国国内の流動性が引き締まることによって株式市場への資金流入が細り、株価の押し下げ要因になります。

金融政策の微調整が株式市場に与える影響を考えますと、中国国内の流動性に敏感な中国本土市場はすでにピークを打った可能性があります。米中貿易交渉の最終合意をきっかけに株価が一段高になる可能性も考えられますが、その後、金融緩和縮小の動きがより鮮明になれば利益確定売りが膨らむと予想されます。

一方、香港市場については、2019年の予想株価収益率(PER)が11倍台と世界的に見てまだ割安で、機関投資家の比率も高いため、今後は実体経済や企業業績の回復が評価されることになるでしょう。香港ハンセン指数は、株価の調整を挟みながら、年末にかけて徐々に上値を追う展開になるのではないかと見ています。

<文:市場情報部 アジア情報課 王曦>

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