はじめに

中華料理が世界を代表する料理の1つであることに異論がある人はあまりいないでしょう。海の幸から山の幸まで豊富な食材を、趣向を凝らした調理方法で仕上げる中華のアプローチからは、人間の食に対する限りない探究心を感じます。

そうした基礎はあるはずなのに、今まで中国を訪れた人に聞くと、「超おいしい店、超かっこいい店に行った!」という話をあまり聞かないような気がしませんか。逆に、個人旅行で入った店のサービスが不満だった、あるいは、取引先に連れていかれた店は建物や料理は見た目が豪華でも味はそれほどでもなかった、という話をよく聞く気がします。

しかし、最近の猛烈な経済発展の影響を受けて、中国のレストラン事情は大きく変わりつつあります。今回は、そんな中国で繰り広げられる独特かつ世界最先端のレストラン戦争の一端を紹介します。


客席のないレストラン「ワイマイ」

最近の中国の発展を象徴するのがハイテクや新サービス。それらを取り入れた飲食業の特色といえば、まず挙げられるのが「ワイマイ(外売)」でしょう。

ワイマイは、「Uber Eats」のようなフードデリバリーサービスを指す中国語です。簡単にいえば、昔ながらの出前システムにアプリ注文・決済の利便性や運び手とのマッチングを付け足した進化系サービスといえます。

世界中に類似のサービスはありますが、4億人にも迫るユーザー規模や加盟店の数、なにより消費者への身近さにおいて、中国は抜きんでています。

以前の記事「中国5000万人の「ぼっち市場」がスゴい進化を遂げていた」にも書きましたが、中国では伝統的な「そもそも食事は家族や友人とするもの」という観念が強く、日本以上にレストランで「おひとりさま」をすることに抵抗感があるという背景があります。これも、自宅で人目を気にせず食べることができるワイマイの普及を後押ししました。

ここから派生し、一時流行したのが、「ワイマイ専門無店舗型レストラン」です。店舗がないということは、集客のための投資、つまり大通り近くの立地や看板、店舗の内装などの投資がいらず、比較的小さな初期投資で始めることができるので、急増しました。

ただ、オンラインになっても、存在を知ってもらわないと注文が集まらないことは変わりません。結局はそのための広告費が必要だったり、店舗がないと信用を得ることが難しかったりとさまざまな問題があり、そこまでのシェアを獲得するまでには至りませんでした。

進化するワイマイ系飲食業

一方で、100%ワイマイだけに頼った経営は難しくとも、その要素を取り入れた「ワイマイ専用受け取りカウンター」を設ける店が増えてきたことは、特筆に値するでしょう。

たとえば日本でも台湾発のタピオカティーが流行したように、中国でも「喜茶(Hey Tea)」というブランドが広めた、チーズやフルーツなどを加えた「新しい茶」が2017年初頭から流行しています。その新しい業態「HEYTEA GO」は、まさにワイマイや独自アプリでの注文→ピックアップの専用カウンターをあらかじめ店舗の設計に取り入れています。

HEYTEA
ピックアップ専門カウンターを設けたHEYTEA GOの店舗(左)。アプリから注文すれば並ぶ必要がない

ワイマイをさらに一歩進めたのが、完全なC to Cフードデリバリーのアプリ「回家吃飯」です。

「家に帰ってご飯を食べよう」という名前のこのアプリは、レストランではなく普通の人が作った料理を注文できるもの。シェフの出身地が省ではなく市単位で表示されるため、地元から遠く離れた大都会で働く人の「故郷の味が食べたい」というニーズにも応えるものになっています。

中国は広く、たとえば広東省だけでも人口は1億人を超えます。したがって、広東出身の人が別の省で「広東料理店」に行ったとしても、運が悪いと海外の日本料理店でゴーヤーチャンプルーとたこ焼きがメニューに並んでいるような気分になってしまうこともあるのです。

基本的には素人が提供する料理なので、衛生管理や信頼獲得などに課題はありますが、数えきれないほどのローカルフードがある中国ならではの面白いアプリともいえるでしょう。

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