はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、今までなんとかやりくりして貯金を捻出してきた32歳の主婦。4月の値上げラッシュで、すでに家計は厳しい状況ですが、子供が大きくなるとこれからもっとお金がかかるため、10月からの消費税アップが怖いといいます。FPの平野泰嗣氏がお答えします。
これまで、チラシをチェックして、できるだけ安いところを探してまとめ買いをするなど、買い物の仕方を工夫し、家計のやりくりでなんとか貯金をしてきました。4月になり、食料品や生活用品を中心とした値上げラッシュで家計が急に厳しくなりました。10月に消費税が8%から10%にアップするのが怖いです。子どもが大きくなって、食費はどんどん増えていくし、将来の教育費に備えてもっと貯金をしなければと思います。これから家計をどうやりくりしていけばよいか不安です。
<相談者プロフィール>
・女性、32歳、既婚(夫:33歳・会社員)
・子ども(1人):長男4歳(幼稚園)
・職業:パート
・手取り世帯月収:33万円(残業代込み)
(夫:26万円、妻:7万円)
・手取り年間ボーナス:約110万円
・貯金:550万円
【家計の状況】
・住居費:8万円(賃貸)
・食費:6.7万円
・水道光熱費:2万円
・日用雑貨・被服費:2万円
・通信費:1.8万円
・教育費(幼稚園・習い事):3万円
・小遣い:4万円(夫3万円、妻1万円)
・保険料:1.5万円(児童手当で別途学資保険の保険料1万円に充当)
・その他(雑費・レジャー):2万円
・毎月の貯蓄:2万円(赤字の月もある)
・ボーナスの使い道:家族旅行、毎月の赤字補填、買い物、残りは貯金
平野: 相談者様のように4月に入り、食料品や日用品を中心に値上げが相次ぎ、財布から出ていくお金があきらかに増えているので、不安に思う人が多いように感じます。10月には消費税が8%から10%に引き上げられることが予定されています。今回は、最近の値上げラッシュと10月からの消費増税を乗り切るために、実現性の高い家計見直しの手順を紹介します。
残業代を見込まない予算設定で年間の貯蓄目標を決める
相談者様の毎月の家計を拝見すると、手取り33万円に対し、支出が31万円で、毎月の貯金額が2万円ですので、残業代が少ない月は赤字になってしまう状況です。残業はお仕事の状況によって変わると思いますので、残業代を見込んだ家計の支出は危険です。残業代を見込んで家計の予算を作る場合でも、残業代が一番少ない月を基準に支出予算を決めることが大切です。
例えば、仮に残業代の少ない月の手取り収入が31万円だとした場合、毎月2万円を貯蓄するとして、残りの29万円で生活費の予算を組みます。残業が多い月は、残業代が増えた分、貯金額を増やします。残業をがんばった分、自分にご褒美をという場合は、残業代の半分は自由に使ったり、毎月の生活費の予備費にしたりして、残りの半分は必ず貯金をするというように決めておくとよいでしょう。
また、意外と忘れてしまいがちなのは、ボーナスの予算化です。毎月の家計状況が厳しいと、一度にまとまったお金が入ってくるボーナス時に、つい財布の紐が緩んでしまいがちです。実は、ボーナスの時こそ、予算をしっかり決めて管理することが重要なのです。例えば、ボーナスでの貯金額は80万円、旅行20万円(年2回)、大きな買い物10万円というように決めておきます。
このようにすると、1年間で24万円(毎月分)+80万円(ボーナス分)+α(残業代の多い月分)となり、102万円+αが1年間の貯蓄目標となります。
実現性が高い家計見直しの「2大鉄則」
毎月の支出を現在の31万円から29万円に抑えるとした場合、1ヵ月の節約目標が2万円になります。この2万円をどのように削減するかですが、実現性の高い具体的な家計見直しの手順を紹介しましょう。
鉄則1:金額の大きい項目から小さな項目へ
家計見直しの鉄則1つ目は、枝葉末節を見るのではなく、まずは大きな森を見ることです。
家計の見直しを効率的に行う方法は、ます金額の大きな支出項目から手をつけることです。支出額が多い分、削減する余地が大きいからです。逆に支出額が少なければ、削減余地は小さいと判断します。この項目の判断をするとき、最初に支出項目をある程度、明確に分けておきます。相談者様の場合、日用雑貨・被服費2万円がまとまっているので、例えば、日用雑貨0.5万円、被服費1.5万円、その他2万円は、レジャー費1万円、雑費(予備費)1万円のように細分化します。
鉄則2:固定費から変動費へ
家計見直しの鉄則2つ目は、できるだけ我慢が不要で効果が継続するものから手をつけることです。
家計の支出を固定費と変動費に分け、固定費から見直しをします。固定費は、毎月の支出のうち、支出額が決まっているものです。例えば、毎月の家賃・住宅ローンなどの住居費や、習い事の月謝、定額で支払う通信費などが該当します。変動費は、月によって支出額が変動するものです。食費や水道光熱費、日用雑貨、被服費などが該当します。固定費は契約を変更するなど、手続きにちょっと手間がかかりますが、一度、見直してしまうと、その効果が継続します。一方、変動費は、食費を削減する、電気代を節約するなど、日々の努力や我慢が必要になり、効果が持続するとは限りません。
相談者様の場合、金額の大きいものという視点で「家賃」「食費」「教育費」「小遣い」が見直しの候補になり、固定費という視点で「家賃」「通信費」「教育費」「小遣い」「保険料」が候補になります。