はじめに

未経験者ながら、プログラマーになる夢を叶えるべく転職したAさん(20代・男性)は、現在会社の待遇に憤りを感じています。

不満の理由は給与ではなく、会社の教育体制。求人には「未経験者歓迎。実務でしっかりと指導していく」とあったのに、業務について全く教えてもらえません。

それどころか現場の上司から「なぜこんなことがわからないんだ」と罵られる日々。Aさんは「教育を受けられると思い入社したのに」と不満を感じ、なんらかの訴えを起こせないかと考えているそうです。

Aさんは会社を訴えることができるのか。企業法務に詳しい高島総合法律事務所の「高島秀行弁護士」にお聞きしました!


Aさんは会社を訴えることができる?

高島弁護士:「まず基本的に、求人内容に未経験者歓迎・知識不問と書かれていたことを前提に入社した場合、知識がないことを理由に、解雇や減給、配置転換など不利益な待遇を受けていないのであれば、法律上は特に問題はないということになります。

一緒に仕事をする同僚や先輩から、知識のないことを責められる等は程度・内容・期間などによりますが、Aさんのケースの場合、扱いが不当であることを理由に慰謝料等の損害賠償請求は成立しないと思います。

人事等の責任者に相談し、教育指導をしてもらえる環境を作ってもらうこと、しばらくの間は知識経験のないことを理解して仕事を進められるよう、周囲と話し合ってみるのがよいと思います。」

自分で知識をつけることも必要

高島弁護士:「それでも会社が何もせず、先輩や同僚が知識・経験不足を責めるという状況が続く場合には問題が生じてくる可能性はあります。

会社としては、この人手不足のなかでせっかく採用した人材なので、知識がなく未経験者を雇った以上、教育指導体制をきちんと整えて一人前の人材にしないと、採用や採用後にかけた費用や労力等が回収できず、無駄になりかねません。

また、費用や労力をかけて新たな従業員を採用しなければならなくなり、大きな損となってしまいます。

会社は、入社時に知識も経験もないことは了承していますが、入社後に自ら学び成長することを前提にしています。

採用された側は、知識も経験もないのでしょうが、今後はその業界や仕事をすると決めて入社したのでしょうから、全部会社が用意して手取り足取り教えてくれることを待っているだけでなく、業界や仕事の基本的な知識については、本を読むなどして勉強をして、同僚や先輩の話についていけるよう準備することは必要かと思います。」

不満を感じるAさんの気持ちも理解できますが、目に見えた不利益を被っていない以上、訴えることはできないそうです。

まずは周りとうまくコミュニケーションを取りながら、自己の研鑽と実務経験でスキルを身につけていきましょう。

取材・文:櫻井哲夫

(この記事はシェアしたくなる法律相談所からの転載です)

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