はじめに
片付けを通して相談者が向き合うもの
普段、私たちは、同時にたくさんのことを忙しく考えています。1つのことに意識を集中させるだけでも大変です。まして、自分自身の無意識にはまったく目が届きません。だからこそ、「無意識」と呼ばれているわけです。
【私たちが意識していることは“氷山の一角”に過ぎない】
しかし、意識は心という氷山の一角に過ぎず、水面下に隠れている無意識のほうが大きくなっています。たとえば、レストランに行ってメニューを選ぶ時、私たちは意識的、論理的に決めているのではなく、瞬時に直感的に決めているのではないでしょうか。場合によっては、考え始めるより速く、「今日はこれにしよう」と心の中で決めることもあります。
家庭の悩みなど重い問題ほど、考えることを避けがちです。向き合おうとしても、目の前の忙しさにかまけて、ついつい「また今度考えよう」と先延ばしにすることはないでしょうか。
そうしているうちに、だんだん苦しくなっていき、家の片付けに集中することもできない。家はどんどん散らかっていき、ついに耐えられなくなって、番組に登場する相談者は、こんまりさんに「片付け」のコンサルテイングをお願いしたのでしょう。
そして、“Spark joy”という魔法の言葉をきっかけに、知らず知らずのうちに、自分の無意識に問いかける習慣が生まれます。家も少しずつ片付き始め、心の余裕が生まれた時、相談者は、自分の無意識の潜んでいた真の課題と向き合うことになるのです。
これが、こんまりさんの片付けレッスンの神髄です。自分の持ち物一つひとつに触って「ときめくかどうか」を考えることは、「自分にとって本当に大切なモノは何か」を問いかけることだからです。“Spark joy”の問いかけを繰り返していくうちに、自分にとって本当に大切なモノが家族であることに気づくのです。
お金の管理から本当に大切なことを見つける
“Spark joy”は、片付けだけでなく、お金の管理にも応用できそうです。
たとえば、家計簿アプリを使っていれば、日々のお金の流れをよく理解することができるはず。どこにお金を使いすぎているのか、どこを節約するべきかのヒントにもなります。しかし、お金を管理すること自体は、手段であって目的ではありません。
本当に大切なのは、お金とうまく付き合い、自分が本当に大切だと思うことのためにお金をうまく使うことではないでしょうか。
人生を考える時に、お金は切っても切り離せない存在です。たとえば、人付き合いが人生の醍醐味で仕事にもつながるのであれば、外食費をあえて多めに使ってもいいでしょう。旅行に行くのが好きなら、旅行にお金をかけてもいいのではないでしょうか。それが、あなたにとっての“Spark joy”ならば……。その代わりに削れる支出がきっと見つかるはずです。
逆に“Spark joy”がないのに、ついつい惰性でお金を使っていることはないでしょうか。平均的な日本の家より数倍大きいアメリカの家でさえ、油断するとモノが増え、散らかった状態になっていました。これと同じで、収入が多い人でも、無意識に働きかけ、本当に大切なことにお金を使わないと、生活にゆとりがなくなります。
お金の管理をきっかけに、人生で本当に大切なことに向き合えば、私たち一人ひとりの人生はもっと豊かにになるはずです。ぜひこれを機に、お金や時間との付き合い方を考えてみませんか。
※ 柴山和久著・『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法』(ダイヤモンド社)の第7章は、人生におけるお金との付き合い方がテーマになっています。