はじめに
睡眠負債という言葉を聞いた事があるでしょうか。
わずかな睡眠不足がまるで借金のようにじわじわ積み重なることによって、命に関わる病のリスクを高めたり、日々のパフォーマンスを低下させることがあります。
ある研究では、毎日6時間の睡眠が2週間続くと、2晩徹夜したことと同じ脳の状態になることが判明しました。
睡眠時間を改善するだけで健康を守り、仕事を攻める力が作りだせることをご存知でしょうか?
健康を守るための睡眠
睡眠不足は、心臓発作、脳卒中、Ⅱ型糖尿病、肥満などが発生しやすく、東北大学の研究では平均睡眠時間が6時間以下の人は、7時間寝ている人に対して乳がんのリスクがおよそ1.6倍になることが分かりました。
睡眠が足りないと、ストレスホルモンのコルチゾールが体内で過剰分泌されるので、ストレスが高くなります。感情的になったり、免疫力が低下して肌のハリを保つコラーゲンも破壊するため、外見も老けてみえ、自分の体を守る事が出来づらくなるのです。
更に、睡眠不足は空腹感が強くなり、満腹感を感じさせるホルモンのレプチンが減少するのでなかなか満腹になりません。1日に6時間未満しか眠らない人は、7時間から9時間眠る人と比較して、30%も肥満になる可能性もあるそうです。
健康を守る睡眠とは、「それらの健康被害を食い止めるためには睡眠が大切」という重要性を感じ、睡眠時間の確保を生活のリズムに取り込むことです。
仕事を攻めるための睡眠
私は企業の組織力向上の研修の一環として、メンタルヘルスケア(心の健康推進)の研修を行っています。心の健康維持のためには睡眠が必須ですので、睡眠に関する教育をするのですが、6時間以上の睡眠をとっている人は、ほとんどが判断力、集中力、コミュニケーション能力、作業遂行能力が増したと自己認識がある人でした。
もともと、医学的レベルでは何の問題も抱えていない人でも、睡眠時間の違いで脳の認知の機能にかなりの影響が出てしまいます。仕事を攻めるための睡眠とは、達成感のある仕事をするために睡眠不足による認知の影響を理解して、睡眠時間の確保を生活リズムに取り組む事です。
人間が何らかの行動をする時、前工程としてこの方向に進もうと思う決断力が必要です。決断力は、睡眠不足により大きく左右されてしまいます。決断力の鈍りにより、ビジネスや日常生活に弊害が出ることがあります。
睡眠を十分にとっただけでも判断力は高まりますが、即座に判断出来る人はある種の回路が脳内に整備されていて、瞬時に判断できるのです。その回路を鍛えるステップを作りましたので、ぜひ試してみてください。
瞬時に判断できる脳内の回路を作る方法
- 今、決断できてないことを決断し、前に進んだとしたらどんなに良い事が起こるか「良いことリスト」を出す。
- 決断できないことをそのままにしてしまう「言い訳リスト」を出す。
- 良いこと、言い訳リストを見て、それらが心に締める割合を10点満点で点数をつける。今日は良い事が7点。言い訳が8点。昨日は良い事が6点、いいわけが9点など。日々のストレス度や睡眠の度合いでスコアが変わるので、良い睡眠がとれた日のスコアに○で印をつける。
- 1ヶ月間、○をつけた睡眠がとれたときの決断の平均値と、睡眠が悪い時の決断の平均値を見比べてみる。
- 4の結果、睡眠の質が高いのに、言い訳のリストのスコアが高い場合は新たな行動をやめると決断しても良い。
決断は前に進むことだけが決断ではありません。やめて立ち止まることも決断の一つです。決断出来る人は1~5の回路を自動的に感覚的に脳内でこなしているのです。悩み続ける人は睡眠不足により、内容を吟味し、分類、集計し、判断する脳の機能が低下しているのです。