はじめに
年齢とともに変わる“働く動機”
ただ、年代別に比較してみると少し様相が変わるようです。以下は、仕事をしたいと思う理由の30代と50代の集計です。
収入面の不安はどちらの年代も上位ですが、30代の1位は子供の教育費。50代の1位は、社会と関わり視野を広げることです。働く動機には、年代によって異なる傾向があることがわかります。
30代の1位が子供の教育費であることは、お子さんが小さい人が多いことが理由ではないかと推察されます。では、50代の1位「社会と関わり視野を広げたいため」が意味するところは何でしょうか。
仕事は、生きがいにもなる
50代でも収入面で今の生活に不安を感じている人が66.3%います。生涯を通じて収入面への不安が消えないとしたら、収入のために70歳を過ぎても働かなければならない、という気持ちになりそうです。この点は、年金支給のあり方と一緒に考えるべき社会課題です。
一方で、それでも50代の働く動機の1位が「社会と関わり視野を広げたいため」となっているのは、仕事には収入獲得の手段という側面だけでなく、仕事に携わること自体に意義があり、生きがいとなる側面もあるからではないかと思います。
それは、ビジネスパーソンとして経験を積み重ねてきたこと、あるいはこれまで歩んできた人生そのものが、仕事に対する見方・考え方を成熟させてきた結果の現れと言い換えても良いのかもしれません。
人生100年時代をどう生きるか?
厚生労働省の調査によると、平成29年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳です。65歳で仕事から引退した場合、男性は16年、女性は22年の余生を送ることになります。
これがもし仮に、男女とも100歳まで生きるとしたら、頑張って70歳まで働いてから引退したとしても30年の余生を過ごす計算です。今よりもグンと長くなります。
その余生が、心身ともに元気で、様々なことに興味関心が尽きない中での30年であれば、楽しい時間となるかもしれません。しかし、健康面に不安を感じたり、楽しみや興味関心が持てない状態で過ごす30年だとしたら、余生はつらいものになるかもしれません。
生涯を通じて何度も学び直しながら自己を磨き続ける生涯学習は、余生を心豊かに生きる手段の一つです。趣味を見つけて楽しんだり、旅行したりするのも良いかもしれません。ただ、それでも30年は長い年月です。それならば、人生を楽しむための選択肢の一つに、“仕事”を含めても良いのではないかと思います。できる限り現役を続けて、余生を短くするという考え方です。
辛くて負担になる“仕事”ではなく、心からやりがいを感じながら楽しむことができて、生涯にわたって生きがいとして続けていくことができる“仕事”を持っている人は、人生の最終盤まで、充実した豊かな人生を過ごせる可能性が高まるのではないかと思います。
生涯の“仕事”に出会うために
改めて70歳という年齢について考えてみると、実は70歳を超えて生き生きと現役を続けている人を私たちは既に何人も知っています。
たとえば、元ビートルズのポール・マッカートニーさんは今年で77歳。アニメ「ドラゴンボール」の主人公孫悟空役などで有名な声優、野沢雅子さんは今年83歳。映画監督で俳優のクリント・イーストウッドさんは今年89歳。みなさん、今でも第一線で活躍する“現役”です。
もちろん、いま挙げた方々はレジェンドと呼ぶべき特別な存在かもしれません。しかし、別にミュージシャンや映画監督でなくとも良いはずです。自分が楽しめてやりがいを感じられる仕事を一つでも見つけられれば、それは生涯を豊かに過ごすための大いなる財産となるはずです。
仕事するだけが人生ではありませんし、仕事は楽しいことばかりではないのも事実です。しかし、人生100年時代を見据え、"今"という時間を生きがいとしての“仕事”に出会うためのプロセスだと捉えた時、目の前の仕事との関わり方や“70歳”という年齢に対して、新たな意味を見出せるようになるかもしれません。