米国は5月10日、対中制裁関税第3弾の税率引き上げを発動し、13日には制裁関税を全輸入品に拡げる第4弾の計画の詳細を発表しました。一方、中国も6月から報復関税をかけると発表しました。これを受け、「米中貿易摩擦を懸念する」「摩擦のせいで経済が悪化する」といった報道が改めて出ています。

しかし、何が「摩擦」なのかについては、あまり明らかになっていないように思います。そこで今回は、米国が中国の何を批判しているのか、対して中国はどのような対応を図ろうとしているのか、について考えてみます。


米国は中国の不公正を正そうとしている

そもそも、米国は20年以上も前から、中国の不十分な知的財産権保護や国営企業優遇、補助金供与という3つの不公正を問題視してきた経緯があります。トランプ政権の新しさは、この不公正を正すために、追加関税という実力行使に出たことです。一方の中国は、国が関税などなんら制約を設けない自由貿易を求めています。

一般的に、自由貿易は双方の国で公正な競争環境を維持する法令や制度などが整備されている場合に限れば、経済にとって良いことです。しかし、中国は米国が問題視する3つの不公正を正すための改革を進める最中で、まだ環境は整備されていません。米国はそこを攻撃しているのです。

米中貿易摩擦は2018年3月ごろから激化し、トランプ大統領は同年6~8月に500億ドル相当の輸入品に25%の追加関税をかけました。さらに、9月には2,000億ドル相当に10%の追加関税を課し、後に25%に引き上げるとしていました。

その後、米政権は後者の関税引き上げを一時撤回し、中国と通商協議を重ねましたが、交渉の遅れなどから2019年5月に引き上げを実行。とはいうものの、通商協議は継続するとしています。

貿易摩擦の中でも米国の輸入量は拡大

興味深いのは、リーマン・ショックを過ぎた2013~2016年に米国経済が低迷した後、景気回復が鮮明になった2017年ごろから米国の輸入額が急拡大していることです。これは米国の雇用拡大、賃金上昇、消費拡大を背景とした需要増によるものです。貿易摩擦と言われる中で起きていることは、米国が中国を含む他国からの輸入を拡大しているということです。

米国の輸入額

今回の米中貿易摩擦の背後には、米国経済の拡大とトランプ政権による関税政策の緻密な計画があったとみています。500億ドル相当のテクノロジー製品に追加関税を課した時は、プリンタやディスプレーなど消費者の目に触れる商品を除外しました。2,000億ドル相当の時にも、消費財をできるだけ除外して資本財の比率を引き上げました。

これは、資本財を扱う企業の収益が影響を受けたとしても、法人税率の引き下げで相殺することができたからです。もちろん、追加関税がまったくかからないほうが企業収益は高くなると思いますが、経済全体で見ればトランプ政権の経済運営は拡大的になっているともいえます。