キャリア

米中貿易摩擦の“着地点”はどこにあるのか

焦点は「中所得国の罠」と「大統領選」

解決には5~10年が必要

貿易摩擦はすぐにでも解決するほうが望ましいですし、米中貿易摩擦が大統領選を前にとりあえず収束する可能性は残っています。しかし、前述した貿易摩擦を引き起こした3つの要因を、今後5~10年で本質的に解決することは簡単ではないと思います。

中国は、トランプ政権以前から米国が問題視する3つの不公正要因について、すでに政策の中に組み込んでいます。それでも貿易摩擦が続いているのは、現時点で中国自身が守るべき知的財産権が蓄積されておらず、国営企業優遇や補助金供与による産業保護なしに他国とまともに競争できないからです。

1980年代の日米貿易摩擦では日本の電気製品が攻撃対象となりましたが、当時の日本は多くのブランドを確立しており、守るべき知的財産権も生まれていました。しかし、今の中国には、世界を席巻するようなブランドは多くないのです。

中国の産業育成策「製造2025」政策は米国の目の敵にされていますが、中国が早くとも2025年ごろにならなければ、守るべき知的財産権が根付き、国際競争力のある民間企業が育たない、と解釈することもできます。

今後、中国が進める改革が実を結び、民間企業が競争によって磨かれ、より高い付加価値を生み出せるようになれば、米国が指摘する不公正さは改善されるでしょう。つまり、中国が経済成長の鈍化する「中所得国の罠」を脱して、世界にとって良い消費国となれば、貿易摩擦は解消されることになると思います。

仮に、今後10年程度のうちに中国が3つの不公正要因が解決できないならば、当面、米国の政治サイクルが重要になります。ドナルド・トランプ氏の中国への対応を追うと、米大統領に就任した2017年は中国への批判を抑えましたが、米中間選挙の年となった2018年は強く中国を批判して追加関税を発動し、米国の雇用を守ると宣言しました。

しかし、2019年は実力行使をちらつかせながらも話し合いで解決する手法に転換し、米国企業の知的財産権保護を獲得しようとしています。つまり、今後の中国への強硬姿勢は、トランプ氏の次の大統領選への布石の1つとして見ることもできます。

<文:チーフ・ストラテジスト 神山直樹>

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