はじめに
積み重なり続ける書類、いつの間にかごちゃごちゃしている台所。日々、頭を悩ませる片付けは、誰もが抱える共通の悩みといっても過言ではありません。部屋が片付かなくて、イライラ、モヤモヤ。でも、時間がない。そんな人も今日からすぐに始めたくなる片付け術を、整理収納アドバイザーの井田典子さんに聞きました。
NHK総合テレビ「あさイチ」をはじめとする各種メディアで“スーパー主婦”として活躍し、「『ガラクタのない家』幸せをつくる整理術」(婦人之友社)などの著書がある井田さん。その整理術の基本とは……?
片付けが苦手な人に勧めたい3つの習慣
――いきなりですが、実は私も片付けるのがとても苦手です。ズバリ、苦手意識がある人はまず何をすればよいのでしょうか?
井田さん(以下同): まず、(1)何かひとつでもよいので「数字」にしてみましょう。数字にすると、いろんなことがクリアに見えるんです。
たとえば、玄関の靴の数を数えてみる。お金を1ヵ月いくら使っているか調べてみる、家計簿をつけてみる。クレジットカードでいくら、現金でいくら使っているか、比率を調べてみるだけでもおもしろいです。なぜ、何に自分がモヤモヤしているかがわかります。
何かが発見できるんですよ、数字って。「靴が8足もあるけど、この棚には入りきらないな」と気づけば、片付けのきっかけになりますし。
――著書「『ガラクタのない家』幸せをつくる整理術」では、ご自宅にあるモノを全部数えていらっしゃったことに圧倒されました。
洋服は元々数えていましたが、編集者の方に、「この際だから、全部数えてみましょう!」とご提案いただいて。全部で2777点。本当に丸裸になりましたね(笑)。
私は、暮らしは「ことば」と「数字」で成り立っていると思うんです。何が何点あるとか、お金をいくら使っているとか。たとえば、「今月はすごく使っている」「節約している」というのは、抽象的。家計簿をつけていない方に「1ヵ月にいくら使っていますか?」と聞くと、「25万円くらい」と答えが返ってきます。
が、実際に調べると30万円を超えているんです。感覚と実際の数字は必ずズレがあるんですね。ひょっとすると、たくさんお金を使ってしまっていることを正視したくないのかもしれません。でも、見えないことは不安を呼ぶもの。靴が8足ある、1か月の生活費が30万円かかっているなど、数字がはっきりしていると、「この靴の数だとスペースが足りないんだな」「今月はお金が2万円余った」と、はみ出しにも、余らせたことにも気が付くんです。ひとつでも何かをはっきりと知ることは、暮らしや生き方を決めることにつながるんです。「素敵な暮らしがしたい」は、抽象的な表現。それをできる限り具体的な言葉と数字におろしていきたいといつも思っています。
――2つ目はなんでしょうか。
次は、(2)夜は1箇所「平らなところ」を作って寝る。1ヵ所でいいんです。テーブルの上を何もないクリアな状態にしてもいいし、流しの洗い物をゼロしてもいい。平らなところを1か所作ることができれば、そこで自分の肯定感を上げることができます。「平らにする」ことは、数字でいえば「ゼロ」の状態。はっきり目で見てわかるので、快感につながります。
――それなら忙しくてもできそうです。
最後は(3)やりたいことをメモに書く。「時間があったらこの映画を見に行きたい」「夏色のパンプスがほしい」など、なんでもいいので望みを1か所に、具体的に書き出しましょう。頭の中にしまっておくと、いいことも悪いこともごちゃまぜになってしまいがち。
――「あの映画が見たい!」と思ったときは楽しいのですが、機会を逃すうち、「なかなか見に行けないな」とネガティブになることがあります。
本来はワクワクすることなのに、頭の中にあるままにしておくと、ハッピーなこともネガティブなこともまじりあって、濁ってしまうんです。できれば寝る前に、いいことも悪いことも、今、頭の中にあるものを下ろしてしまいましょう。そうすると、すっきりした頭で眠りにつくことができます。自然と「ここで3時間あれば映画に行けるな」など、叶えやすくなりますよ。