はじめに
日本にも所縁のある有望スポーツ銘柄
こうした流れの中で、中国のスポーツアパレル大手の安踏体育用品(アンタ・スポーツ、銘柄コード:2020.HK)の動きは注目に値します。
同社は北京冬季オリンピックを見据えて、足元ではウインター・スポーツ事業の強化を着々と進めています。4月1日にはフィンランドのアメアスポーツへのTOB(株式公開買い付け)が終了したと発表。アメアスポーツはスキー・スノボ用品の製造・販売を手掛ける「サロモン」などを傘下に持っています。
また、日本のスポーツアパレル企業のデサントをめぐって伊藤忠商事が主導権を握ったことも、安踏体育のウインター・スポーツ事業強化に寄与するとみています。
同社はデサント株を7%近く保有する大株主で、伊藤忠の改革を支持している理由として、デサントが持つウインター・スポーツ分野の強みを中国で活かすことが挙げられます。実際、安踏体育はデサントブランドの店舗を今後5年間で年3~4割ペースで増やしてゆく考えを示しています。
eスポーツの正式種目採用が追い風に
「eスポーツ」は、2022年9月に開催されるアジア競技大会で正式種目として採用される予定です。中国では、eスポーツが2003年に中国当局が正式体育種目に採用したことから、サッカーなど一般的なスポーツ競技と同じくらい人気が高いです。
2016年には中国教育部が大学の専攻科目に追加し、これまでに20の大学と200の専門学校にeスポーツの専門課程が開設されています。その市場規模も2019年の11億ドルから2021年には16.5億ドルに拡大すると予想されています。
中国では、eスポーツは産学連携の進展によって、単にゲームの腕前を競う競技ではなく、企業を巻き込んだ一大ビジネスになりつつあります。そして、新種目として採用されるアジア競技大会を契機に、さらなる発展が見込めるとの指摘もあります。また将来的には、オリンピックの正式種目に採用される可能性もあるともいわれています。
このeスポーツ関連の有望銘柄としては、IT大手のテンセント(700.HK)が挙げられます。同社は2018年5月にeスポーツ産業の振興に向けて、イギリスのオックスフォード大学と共同でゲームを主宰し、専門学科を開設する計画を発表しています。同時にeスポーツのサービスプロバイダー「ナイスTV」に出資したことも明らかにしました。
中国のeスポーツのプレーヤーはおよそ4.3億人に上り、プロのeスポーツ選手も45万人程度います。プロ選手の平均月収は1万1,200元(約18万6,000円)で、中国の大卒の初任給を上回る水準。今後もプロ化が進むと予想されます。
恩恵を受けそうな意外な業種は?
2022年は中国で国際大会が開催されることから、海外から中国への訪問客が増加すると見込まれます。それに伴い、中国の風光明媚な観光地などもその恩恵を受ける可能性があると考えられます。
上海B株市場に上場している黄山旅游発展(900942.SS)は、世界遺産(文化遺産、自然遺産)に登録された中国有数の景勝地の黄山を管理・運営する会社。2004年にユネスコの「地質公園(ジオパーク)」に選ばれたこともあり、国内外から多くの観光客が訪れています。
「中国体育2022」には、直接スポーツに関係のある銘柄だけでなく、こうした周辺産業にも追い風が吹くとみています。
<文:市場情報部 佐藤一樹>