はじめに

2月期決算企業が株主総会シーズンを迎えています。5月29日には、流通大手のイオンが、本社のある千葉市幕張で株主総会を開催。出席した株主数は同日11時30分時点の概算で1,953人と、昨年の1,903人を上回る株主が来場しました。

株主総会といえば、何やら難しい話が続くので、お土産だけを目当てに出席している個人株主も少なくありません。しかし、流通大手のイオンだけに、質疑応答では株主でなくても気になる各種商品やサービスに関する言及もありました。

株主からの質問に対して、同社幹部はどのように説明したのか。株主総会の全容をリポートします。


異例の“お詫び”からスタート

5月29日10時から千葉市の幕張メッセで開かれた、イオンの株主総会。この日の議長を務めた横尾博取締役の“お詫び”から、総会はスタートしました。

異例の出だしとなった理由は2つ。1つは、2019年2月期の業績が当初の会社計画を下回る水準で着地したこと。もう1つは、ビルメンテナンス子会社のイオンディライトで不適切な会計処理が発覚し、イオンの純利益ベースで50億円程度の損失が発生する見込みであることです。

これを受け、横尾議長は執行役の報酬を減額することに言及。その一方で、イオンの2020年2月期通期の業績計画については、現時点では修正しない考えを示しました。

続いて、監査委員会の議長を務める大野恒太郎取締役が監査報告を、横尾議長が剰余金の配当に関する説明を、それぞれ行った後、岡田元也社長が2017年12月に発表した中期経営計画の取り組み状況について報告しました。

捻出資金をデジタルシフトに全振り

今年は、イオンの前身であるジャスコが設立されてから50年、現在のイオングループが誕生してから30年という節目の年。平成とともにスタートしたイオングループですが、その取り巻く環境は30年間で大きく変化したと、岡田社長は振り返りました。

岡田社長の言う「環境変化」とは、「単身世帯の増加」と「世帯収入の減少」を指しています。こうした変化に伴い、通信費など世帯ごとに発生する支出が大きくなる一方、比較的高額な衣料品などの支出が激減したというわけです。

これらの状況を踏まえ、イオンの中期計画では「リージョナル」「デジタル」「アジア」「投資」の4分野にフォーカス。平成の30年間でスーパーの売り上げはコンビニやディスカウントストア、ドラッグストア、ネット通販に奪われてきたという反省の下、単身世帯にとっての便利さや低価格、品ぞろえ、鮮度、独自性を高めるため、物流網や食品加工センターの整備を進めていく考えを披露しました。

加えて、小売りの原点に回帰することによる店舗の活性化、金融など好調事業の利益率引き上げ、不振事業の整理などを進めることで捻出した資金を、デジタル分野に集中投資する方針を説明しました。

2月には、欧州最大手のスポーツEC企業「シグナスポーツ」に出資し、同社の持つデジタルと店舗の融合ノウハウをイオンに導入。「スポーツ専門店に奪われていた売り上げを奪い返す」(岡田社長)とブチ上げました。

そのうえで、「人口動態の激変とデジタル革命への対応が不可欠。新しい令和の時代に、お客様第一で、それぞれの地域でお客様の生活を豊かにしていきます」と、経営方針の説明を締めくくりました。

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