はじめに

「どこでもドアがあったら……」と誰もが一度は想像したことがあるでしょう。

『ドラえもん』に出てくる「ひみつ道具」は、私たち一般人にとってはありがたい代物ですが、投資家にとっては命取りになりえる代物でもあります。どこでもドアによって投資先のビジネスが世間からもはや必要とされなくなった場合、資金を失ってしまう可能性があるからです。

投資家は、どこでもドアが社会にもたらす影響を慎重に判断したうえで、自分の資産を守るための行動を取るでしょう。同時に、資産を増やすために最適な投資先はどんな会社かを考えます。

一見無意味にも思える考察ですが、「どこでもドア」という部分を「人工知能」や「量子コンピュータ」と置き換えてみるとどうでしょうか。このような思考のフレームワークを1つでも持っているだけで、現実世界における投資の武器としても役立つかもしれません。

そこで今回は、どこでもドアの発明によって投資家がどのような会社に投資するのかを考察したいと思います。


どこでもドアを発明した会社の株は買わない

投資家は、どこでもドアを発明したA社の株式を買うことはないでしょう。その要因は大きく分けて2パターンあります。

まずは「すでにA社株を持っている」というパターンです。投資家は、事前に開示されている情報を勘案し、有望であると判断した段階で株式を保有します。どこでもドアの発明が将来実現すると考えて投資したのであれば、むしろどこでもドアができたタイミングでA社株を買うことはなく、むしろいつ売るか検討していると考えるほうが自然でしょう。

次に、「A社株を持っていない」というパターンです。A社株を持っていなかった投資家は、どこでもドアができる前から投資判断を誤り続けていたということになります。どこでもドアが生まれたという答え合わせが行われてから正しいほうに資金を投じても、勝敗は変わりません。

むしろ、答え合わせが行われてからの投資は大きなリスクとなりえます。

どこでもドアが発明されたことが明らかになると、A 社の株価は一時的に大幅上昇することが考えられます。そこに投機的取引を行うデイトレーダーやヘッジファンドなどが、さらなる高値を取ろうと参入してくるでしょう。さらに、発明品がわかりやすいこともあって、普段は投資しない人々もA社の株式を購入しようと殺到するかもしれません。

いかに有望な商品を発明したとしても、会社にはそれぞれ適正な価値の相場があります。このように買い一辺倒になってしまうと、どこでもドアがA社にもたらす利益を無視した水準まで株価が高騰してしまいます。一方で、どこでもドアの発明をかねてから見抜いていた賢明な投資家は、このタイミングで売ろうとしています。

主観的には投資だと思っていても、投機的取引を行う人々や一般人までが買いに走り、投資家が売っているという状況下で株を買うということは、客観的には投機的取引を行っていることと変わりはありません。したがって、A社株を保有していない投資家は、どこでもドアが発明されてもA社株を買うことはないでしょう。

どこでもドアが発明されたタイミングにおいては、「どこでもドアはどのような業界に影響を与えるか」ということが投資家の主要な関心事になっていることでしょう。

<写真:アフロ>

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