はじめに
経済指標も細かく内訳を見よう
過去の記事でも書いたことがありますが、ニュースで数字を見たら、その数字の内訳や個性要素を見る習慣をつけると、分析の精度が格段に上がります。たとえば、GDPについては先月の20日にこのようなニュースが出ていました。「内閣府が発表した1~3月期の実質GDPは年率換算で2.1%増だった。2四半期連続のプラス成長となった」
いま日本では予定通り10月に消費増税をするのかが注目されていますが、このニュースを見て、日本の景気はいいから消費増税は予定通り実施されると思った人もいるかもしれません。専門家でもこのようなコメントをしている人がいました。
しかし、やはり内訳を見ないことには正確な判断は出来ません。GDPの構成要素をざっくりと分解すると、「GDP=消費+投資+政府支出+純輸出(輸出額から輸入額を差し引いた数字)」のかたちになります。前述の2019年1~3月期の実質GDPの伸び率を構成要素ごとに見てみると、消費(個人消費)は0.1%減と2四半期ぶりのマイナスとなっています。輸出は2.4%減、輸入は4.6%減です。どうでしょう?最初に見たニュースの印象が変わってきませんか?
GDPの構成要素に純輸出という項目がありますが、これは輸出額から輸入額を差し引いた数字なので、輸出の減少以上に輸入の減少が大きかったため、結果的にGDPをプラスに押し上げる要因となっています。
このように経済指標も表面的な数字だけを見ていると、本当の意味を見誤る可能性があります。
1つの指標から知識を広げよう
さて、GDPの前についていた「実質」がどういう意味かを最後に学びましょう。GDPには「実質」と「名目」の2種類があります。この違いも簡単な例を挙げて学んでみます。
たとえば、前述の例のように、ある原材料メーカーが100円で原材料を売り、加工品メーカーがそれを加工して200円で売ったとします。このとき、先程の考えでいうと付加価値の合計は「100円+(200円-100円)=200円」ということになります。翌年、物価が上昇して加工品メーカーが300円で売るようになったとすると、付加価値の合計は「100円+(300円-100円)=300円」になります。付加価値の合計が200円から300円になったわけですから、前年比50%伸びています。しかし、本当にこの1年間で経済が成長したのでしょうか。今回の例でいえば、あくまで物価の上昇が要因の1つであり、経済が成長したからとは言いにくいと考えます。
名目GDPは、物価の上昇などは考慮せずに、この例の通り付加価値の合計をそのまま算出したもので、実質GDPは物価の影響を考慮して調整した数字になります。よって、一般的にはGDPを見るときは物価の影響を考慮した実質の方を見るほうがよいでしょう。
次回は、この物価について学んでいきます。