はじめに

「へいわのボク」と「せんそうのボク」では、なにが変わるのだろう――。

シンプルな言葉と絵で、平和な世界と戦争のある世界を対比させた絵本『へいわとせんそう』が静かな話題を呼んでいます。

絵本のテキストを手がけたのは、詩人の谷川俊太郎さん。谷川さんが考える平和、そして戦争について、お話を伺いました。


平和であることが当たり前。そこに戦争が侵入してくる

――戦争と平和がテーマの絵本ですが、タイトルは「平和」が先なんですね。

谷川俊太郎さん(以下同):トルストイがあまりにも有名ですからね(笑)。ただ、本来は「平和であること」が当たりなんです。平和があって、あとから戦争が侵入してくる。多くの人が「戦争が終わったから平和な時代がやってくる」と思いがちですが、順序が逆なのではないかと考えました。

戦争については、以前出した絵本(講談社刊『せんそうしない』、2015年)に基本的な考え方を記しました。動物同士は種が違っても戦争はしない。子ども同士もケンカはするけれど戦争はしない。

戦争は大人同士がするものです。ただ、テーマは同じでも、絵によって絵本のテキストも変わりますからね。(『へいわとせんそう』の絵を担当した)Noritakeさんが描いた絵を見て、今回の絵本の発想が膨らんだ部分も大きいです。

――戦争している「みかたのかお」と「てきのかお」がとても良く似ているということに気づいた瞬間、ハッとさせられました。

似ているようでちょっとずつ違うんですよ。僕は絵本をたくさん作ってきたけれど、Noritakeさんはこれまで関わった絵描きさんとは全く異なる次元の絵を描く人。

表情があるのかないのか分からないけれど、無表情とも言えない。深い普遍性みたいなものを感じます。

――「敵の顔も味方の顔も同じなんだよ」と書くより、この絵を見比べて直感的に「同じ顔だ」と感じるほうが、子どもにとっては衝撃が大きそうです。

そういう感じ方もあると知ってもらえたらいいのですが。でも、衝撃を受けるのは大人だからかもしれませんよ。小さい子どもは大抵「なんで同じ顔なの?」という反応をするくらいですから。その意味が分かってくるのは、もっと大きくなってきてからですね。

――絵もテキストもシンプルだけれど、小さい子どもに向けて書かれた絵本ではないんですね。

絵本を書くときは、男女や年齢を意識していません。僕が書きたいと思ったものを書いているだけ。そもそも、絵本は子どものためのものではないですから。いい絵本は大人が読んでも面白いんです。

――自分の子どものためにと思って買った親が、この本を読んで「平和ってなんだろう」と考えてくれたら…

それは本当にありがたいことですね。

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