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富裕層や億り人が標的?税務署はどうやって脱税を見抜くのか

第2回:何に目をつけて不正を暴くのか

国にとって税収入とは、企業にとっての売上、会社員にとっての給料のようなもの。安定して確保したいし、減ってしまっては困るものです。ましてや脱税によって、税収入が減ることは、絶対に避けなければなりません。

前回の記事でもお伝えしたとおり、国税当局は、脱税の取り締まりのために日々情報を集め、積極的に税務調査を行っています。では、不正についての情報はどのようにして入手しているのでしょうか?


どうやって不正を見つけ出しているのか?

国税当局は、税務調査の対象になる個人や会社の選定基準を明らかにしていません。しかし、税務署は、国民から集めた税金によって運営されています。手当たり次第に調査を行って、時間やお金を無駄に使うわけにはいかないということは明らかです。

そこで、ある程度当たりをつけることになります。ポイントは、いかに効率よく、金額の大きい、あやしい事案にたどり着くかです。当たりをつける主な方法としては、次のものが挙げられます。

1.過去の申告書データから異常値に注目する

国税当局では、納税者の申告データを国税総合管理システム、通称“KSKシステム”に取り込み、一元管理しています。このKSKシステムは、自動的に異常値を検知することができるのです。

異常値とは、たとえば、前年対比で原価率が大きく変動している、毎期売上が一定なのに一期だけ利益が出ていない、一期だけ多額の経費が発生している、などです。

国税当局には、業種別・業態別・事業規模別の情報がデータベースに蓄積されています。そのデータベースの情報と照らし合わせながら異常値を分析し、調査対象を絞っていきます。

2.大口の取引に注目する

たとえば、不動産の売買が行われて持ち主が変わると、基本的に法務局で登記の手続きが行われることになります。そして、登記をすると、その情報が自動的に国税当局に通知されるようになっています。

このように、日々行われている無数の取引のうち、特に大口の取引については、ほとんどの場合、国税当局に何らかの形で情報が提供されるような仕組みになっているのです。国税当局は、それらの情報をもとに正しく申告が行われているか、不正が行われていないかを随時チェックしています。
 

3.関係者等からの密告に注目する

企業の場合、従業員や退職した元従業員などから、「あの会社は不正を働いている」という密告が、国税当局に直接持ち込まれる場合が少なからずあるようです。

必ずしもすべての密告が調査につながるとは限りません。しかし、国税当局による積極的な情報収集の引き金にはなり得るでしょう。ニュースになっている脱税事件の発端も、密告がきっかけになっているのかもしれません。

4.富裕層に注目する

国税庁では、2014年7月から東京・大阪・名古屋の各国税局に「重点管理富裕層プロジェクトチーム」を設置。2017年7月から全国に展開しています。

特に高額な資産を有するとされる富裕層(超富裕層)については「重点管理富裕層名簿」に記載され、関係する個人・法人をすべて含めた状態で一体管理をするという運用がされているのです。

富裕層や超富裕層を定義する所有資産の具体的な金額は明示されていませんが、一般的には、富裕層は財産額が一億円以上、超富裕層は十数億円以上の資産家が該当するといわれています。

このことからわかるとおり、資産家は国税当局から常に注目されているといえます。

5.新たな投資法に注目する

少し前だと、FX(外国為替証拠金取引)、最近ではビットコインなどの仮想通貨取引といった、新たな投資法が次々と出てきています。いわゆる「億り人」は、ある日から突然資産家になる人が多く、また、新たに考案された取引の場合、税務の取扱いも明確になっていないケースもあり、申告漏れや脱税の発生が懸念されます。

申告漏れが起こりやすい取引については、類似事案について集中的に調査が行われることがあります。もちろん、法人だけでなく個人も対象です。

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