はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ

今回の相談者は、3人の孫へ教育資金の贈与を考えている60代の男性。非課税制度を活用したいけれど、使い勝手がわからないといいます。FPの伊藤英佑氏がお答えします。

教育資金の贈与が1500万円まで非課税になる制度は、どのように使えば良いのでしょうか。 未就学児の孫が3人います。 それぞれに400~500万円ずつ渡したいと考えているのですが、渡し方がわかりません。一度に渡すと別のことに使われてしまうのではないか、孫に渡すよりも親である子供にまとめて渡すことができれば本当に困ったときに使えるかもしれないなどと考えると、使い勝手がよくわかりません。ご教示いただけますと幸いです。


〈相談者プロフィール〉
・男性、60代前半、既婚、子供2人


伊藤: ご質問ありがとうございます。教育資金一括贈与の非課税制度の使い方について迷われているようですね。質問内容の順に沿って説明いたします。ご確認いただいた上で、詳細についてはご自身でお調べになるのが良いと思います。

教育資金一括贈与の非課税制度は、通常、年間110万円以上の生前贈与にかかる贈与税が、子や孫の教育費(主として学費)に限り、最大1500万円まで非課税で前渡しできる特例です。教育資金の支払いについて、相続税・贈与税に税制上の特典を付けることにより、高齢者の金融資産の世代間移転を促そうというねらいがあります。

贈与には専用口座の開設が必要

まず、未就学児の孫が3人いて、それぞれに400~500万円ずつ渡したいけれど、渡し方がわからないとのことですが、制度を利用するためには信託会社(主に信託銀行)に専用口座を作ることになります。それぞれ3人の孫ごとに口座を作り、資金を預け入れ、教育資金に関する費用の領収書等を信託会社に提出することで、贈与を受ける孫にお金が支払われることとなります。

領収書がないと資金の受け渡しがされない?

次に、一度に渡すと別のことに使われてしまうのではないかという点については、上述の通り、この制度を利用すれば学費の領収書等をもってしか、資金の受け渡しがされませんので心配不要です。ですが、資金の利用範囲については制度上の制限があります。ご質問者はもともと1人当たり400~500万円ずつを贈与に考えておられるので関係はないかと思いますが、たとえば、学校以外のいわゆる習い事への利用については、1500万円のうち500万円が上限となるため注意が必要です。制度を利用する際は、資金の使途が対象かどうか事前に調べた方がいいでしょう。

制度を活用しなくても「必要な時」なら贈与税はかからない

続いて「孫に渡すよりも親である子供にまとめて渡すことができれば、本当に困ったときに使えるかもしれない」ということですが、親であるご質問者の子供に事前に“まとめて”贈与をすると、贈与税が掛かってしまいます。

しかし、学費等の支払いに困ったときに、その時点で、祖父母が代わりに出してあげる分には税金の心配は要りません。祖父母が孫に「事前にまとめて」ではなく「必要なその時」に都度、教育資金を出してあげることについては贈与税は掛からないからです(※)。

また、お孫さんそれぞれに年間110万円以内で、4~5年掛けて生前贈与をしておくという手も考えられるでしょう。未成年者の孫の口座は、通常は親が法定代理人として管理します。「教育資金に使うように」と言付けをして、親がきちんとその通りできれば問題ないですし、信託会社への面倒な手続きも不要になります。

このポイントを踏まえ、その上で必要でしたら教育資金一括贈与の非課税制度を利用すると良いでしょう。

(※)そもそも親族のために教育費を含む生活費を通常の範囲で支払うことに贈与税は掛かりません。参照:「国税庁タックスアンサーNo.4405 贈与税がかからない場合 

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