はじめに

仮需比率は底入れを示唆か

また、仮需の水準が市場ボリュームに対してどのような水準にあるのかを「仮需比率」で見てみます。

裁定買い残(金額ベース、裁定売り残を差し引いた値)と信用買い残(金額ベース、信用売り残を差し引いた値)の金額を東証1部の時価総額で割った仮需比率を見ると、4月26日現在で0.20%と、最近の最低水準となります。6月7日現在でも0.24%と低位な水準にあります。

仮需比率

2016年9月9日には、仮需比率が0.25%まで低下するとともに日経平均株価が底入れし、仮需比率の上昇(仮需が積み上がる)とともに日経平均株価が上昇しました。今回も、仮需比率の低下による底入れと、その後の日経平均株価の上昇に期待したいところです。

今後の株式市場の見通しは?

米中貿易摩擦による世界的な景気悪化懸念などを背景に、日経平均株価は4月24日に付けた年初来高値から下落しました。しかし、中国政府高官による米中貿易交渉への前向きな発言や、米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ観測を背景に、NYダウが上昇したことが支援材料となり、日経平均株価は6月4日安値を底として反発に転じました。

一時急浮上した米国によるメキシコへの追加関税問題は、ドナルド・トランプ米大統領が6月7日、不法移民対策をめぐりメキシコと合意し、メキシコ製品への制裁関税発動を無期限で停止すると表明したことで、沈静化しました。

今週は18~19日に米FOMC(連邦公開市場委員会)の開催が予定されています。FRBのジェローム・パウエル議長は6月4日、貿易摩擦による景気下振れリスクを警戒して「適切に行動する」と、利下げをためらわない姿勢を表明しました。

7日に発表された5月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数の伸びが前月比7万5,000人の増加と、市場予想の17万5,000人増を下回り、時間当たり平均賃金は前月比0.2%増にとどまりました。これを受け、FRBが利下げに踏み出すとの見方が強まりました。

市場では「7月のFOMCで予防的利下げが実施される可能性が高い」とみられていますが、今回6月のFOMCは7月利下げの可能性を占ううえで、重要な会合となりそうです。東京株式市場の仮需比率はすでに低水準な位置にあります。FOMCで7月利下げの可能性が示唆され、米国株高となれば、日本株にとっても支援材料になると考えられます。

<文:投資情報部 大塚俊一>

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