はじめに

年金の「繰り下げ受給」で年金額を最大42%アップ

老後の年金(老齢年金)は原則65歳からの受給ですが、年金の受給開始時期は60歳~70歳まで選択できます。

65歳で請求せずに66歳以降70歳までの間で請求したときから増額された年金額を受給する場合が「繰り下げ受給」と言います。増額率は1カ月遅らせるごとに0.7%、最大で42%(0.7%×60カ月)です。

受給開始年齢 受給率 受給額
65歳 100.0% 78万0,100円
66歳 108.4% 84万5,628円
67歳 116.8% 91万1,157円
68歳 125.2% 97万6,685円
69歳 133.6% 1,04万2,214円
70歳 142.0% 1,10万7,742円

※2019年度の老齢基礎年金の満額78万100円で試算

<繰り下げ受給の主な注意点>
・繰り下げできるのは、他年金の権利が発生するまでの間です。
・繰り下げで増額になるのは70歳までで、仮に75歳まで受給開始を遅らせても、70歳時点の増額率のまま計算されます。
・「繰り下げによる増額請求」または「増額のない年金をさかのぼって受給」のどちらか一方を選択できます。

年金が60歳から受給ができる「繰り上げ受給」とは?

「繰り下げ受給」とは逆に、60歳~65歳になるまでの間に受給開始を早め、減額された老齢年金を受給することで「繰り上げ受給」を選択することもできます。

減額率は1カ月早めるごとに0.5%、最大で30%(0.5%×60カ月)となっています。繰り上げ請求をすると減額率はずっとそのままで、取り消しや変更はできませんので注意しましょう。

受給開始年齢 受給率 受給額
60歳 70% 54万6,070円
61歳 76% 59万2,876円
62歳 82% 63万9,682円
63歳 88% 68万6,488円
64歳 94% 73万3,294円
65歳 100% 78万100円

※2019年度の老齢基礎年金の満額78万100円で試算

<繰り上げ受給の主な注意点>
・繰り上げ請求をすると、寡婦年金を受給できる方も寡婦年金の請求はできません。
・繰り上げ請求をした後に障害の状態になっても障害基礎年金は受給できなくなります。
・繰り上げ受給をしていて、65歳前に遺族年金の受給権が発生した場合は、老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択しなければなりません。
・国民年金に任意加入できなくなります。

年金の"繰り上げ""繰り下げ"どちらがお得?

老齢基礎年金を満額受給できる方について試算した結果をみると、 76歳より長生きできれば、繰り上げ受給するよりも65歳で受給開始した方が多く年金を受給できることになります。 81歳より長生きすると、70歳で受給開始方が65歳で受給開始するよりも多く年金を受給できることになります。

しかし、配偶者の年の差が離れている場合(年下妻の場合)に支給される加給年金は、老齢厚生年金を繰り下げると支給されないので注意が必要です。加給年金を受給するためには、老齢基礎年金のみを繰り下げましょう。また、70歳まで繰り下げると年金額は42%増えますが、年金額が増えることで税金・健康保険・介護保険などの社会保険料などが増える場合がありますので注意深く「繰り下げ」を選択する必要があります。

年金制度を理解した上で、ご自身の健康、資産の状況、ご家庭の事情など総合的に考えて「繰り上げ」「繰り下げ」の選択をトータルで判断する必要があります。

まずは、具体的に年金額の見込みを把握することが老後対策のファーストステップ。ねんきん定期便が届いたら、まずはご自身の年金記録に誤りがないか確認し、年金の見込み額を把握した上で老後のライフプランを考えてみましょう。

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