はじめに

国税庁より、平成30年度の「査察の概要」が先日公表されました。

査察概要には、1年間の告発件数、社会的波及効果の高い事案の紹介や脱税総額などが記されています。

シリーズの最後の今回は、税務調査が行われやすい時期、最新の脱税事案の紹介と脱税を疑われないためにはどうすればいいのかといった疑問にお答えしていきたいと思います。


税務調査が行われやすい時期はいつ?

税務調査が最も多く行われる季節はいつかご存知ですか? 正解は、秋です。

国税当局の事務年度は7月から翌年6月末までの1年間です。7月から12月までを上期、1月から6月までを下期としています。

税務当局の職員は公務員です。異動の内示が出た場合、年度替わりの7月から新たな職場に着任することになります。下期では、1月から確定申告時期にかけては税務署の繁忙期にあたるので、調査件数は少なくなります。また、税務調査の対応が長引いてしまうと、異動の時期にさしかかってしまいます。基本的に、上期の調査は上期のうちに、下期の調査は下期のうちに終了させたいと思う調査官がほとんどです。

したがって、上期の方が落ち着いて調査できることから、税務調査は秋に多くなります。もちろん、季節に関係なく集中的に調査が行われることはありますし、悪質な事案については時期を問わずに調査が行われます。

悪質性の高い無申告者が年々増加

その悪質な事案として「査察の概要」に挙げられているのが、「単純無申告ほ脱犯(故意の申告書不提出によるほ脱犯)」です。悪質性の高い無申告者として、平成23年から厳正に対処されており、年々増加傾向にあります。平成30年度は、単純無申告ほ脱犯として10件告発されました。

告発事例として紹介されているのは、(1)外国為替証拠金取引(FX)がらみの事案と、(2)私設ファンクラブ運営利益の単純無申告ほ脱事案です。

(1)他人名義を使用したFX取引利益の無申告ほ脱事案
外国為替証拠金取引(FX)により多額の利益を得ていた者が、インターネットを利用した自動売買ソフトを用いて、数十もの他人名義で同取引を行うことにより所得を隠し、所得税の確定申告を一切せずに納税を免れていたという事案です。

こちらの脱税者は、過去においても所得税法違反の罪で有罪判決を受けていたということです。

(2)私設ファンクラブ運営利益の単純無申告ほ脱事案
元歌劇団トップスターの私設ファンクラブを運営していた者が、多額の利益を得ていたにもかかわらず、所得税の確定申告を一切せずに納税を免れていたという事案です。

いずれも、急に大金が手に入り、納税者に申告・納税の意識が薄かった事案だといえるでしょう。

この記事を読んでいるみなさんも、いつ何時、大金が手に入るとも限りません。多額の収入を得ることになった場合には、バレないだろうと軽く考えて無申告でいると、最悪の場合、税務当局から告発される事態に陥ってしまいます。

脱税は決して他人事ではありません。そうならないためには、稼ぎに応じて適正に申告納税をしなければならないのだという意識を持つことが大切です。

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