はじめに
G20サミットと米中首脳会談が今週末に迫ってきました。5月5日にドナルド・トランプ米大統領が突然、対中追加関税引き上げ発言を発して以来、対中関税第4弾の可能性や中国通信大手ファーウェイとの取引禁止、それに対する中国からのレアアースの対米輸出禁止の検討と、激しい攻防が続いてきました。
しかし6月18日には、トランプ大統領がG20に併せて米中首脳会談を持つとの意向を示し、再び米中協議の軟着陸への期待が高まっています。
とはいえ、米中通商協議の本質が「米中の覇権争い」であり、トランプ大統領が来年の米大統領選挙にかけて、外交政策での切り札として利用し続けると予想されるため、米中貿易摩擦は強弱を変えながらも、長期化する可能性はあるでしょう。
こうした局面での投資対象としては、対外輸出依存度や米中向け輸出依存度が低い国、つまり内需の成長力が大きい市場が選好されるとみられます。米中貿易摩擦の影響を受けてもなお、成長が期待できそうなアジア、オセアニア諸国を分析してみたいと思います。
7%の成長を見せたのは?
まず注目したいのは、ベトナムです。米中貿易戦争における「漁夫の利」を得ると期待されています。中国と競合する電子・電機や繊維などの輸出増が見込まれるためです。
昨年は良好な雇用環境を背景にした民間消費や、生産拠点の移転等を背景にした対内直接投資が堅調に推移し、2018年の実質GDP(国内総生産)は前年比+7.1%と14年ぶりに7%を超えました。
2018年末にはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を批准するなど、政府は外圧を通じて経済構造改革を進める姿勢を示しています。2019年も海外投資の流入や輸出増などを背景に、6.5%超の成長が見込まれています。
選挙後の安定政権に注目
次に、3月から5月にかけて選挙が実施されたアジア、オセアニア諸国が浮かび上がってきます。
選挙結果がポジティブサプライズとなった豪州では、政権交代予想に反して、与党・保守連合(国民党・自由党)が過半数超で勝利しました。
野党・労働党が掲げた富裕層の住宅取得に悪影響を及ぼしかねない政策が回避されたばかりでなく、与党が選挙公約に挙げた追加の住宅政策の効果が期待されます。これまで手控えられていた住宅投資や企業投資が動き始める見通しです。
インドでも、ナレンドラ・モディ首相が率いる与党・インド人民党(BJP)が予想外に議席数を伸ばし、下院の過半数を確保しました。政治的な不透明感の払拭で、様子見にあった民間投資や自動車購入等の内需を中心に景気は持ち直すでしょう。
モディ首相が1期目に掲げた雇用改革や土地収用法の審議が進展すれば、市場は持続的な成長への足掛かりと評価しそうです。特に注目される政策は、今後5年で約160兆円に上るインフラ投資の加速です。農家所得の倍増政策も消費の下支えとして期待されます。