ようやく民政化したタイ

タイでは、2014年に発生したクーデター以降、軍事政権が続きましたが、3月の選挙を経て民政へ移管されました。とはいえ、プラユット・チャンオーチャー暫定首相が首相に選出されたことで、実質的な親軍政権は継続。親軍政の「国民国家の力党」は連立で下院の過半数を確保しましたが、これまでの軍政権下よりも政治の決定スピードは緩やかになるでしょう。

新政権の注目は、CPTPPへの参画です。これまでは軍事政権に対する国際社会からの批判もあり、通商政策を進めにくかったのですが、今後は民政下で信認を築き、交渉が進捗するものと期待されます。

タイはカナダ、メキシコとは自由貿易協定(FTA)を締結していないため、輸出の拡大余地は大きいでしょう。このほか、大規模投資が行われる東部経済回廊(EEC)の開発や、重要産業として掲げる医療機器や自動化機器、バイオ関連などの政策が継続される見通しです。

インドネシアでは、ジョコ・ウィドド大統領の再選により穏健改革路線が継続される見通しです。選挙の様子見で手控えられた自動車購入が回復に向かうでしょう。さらに、政府が2018年11月に示したものの棚上げになっている、外資出資比率規制の緩和策(対象25業種)などの改革進展が注目されます。

フィリピンでも、総選挙で支持されたロドリゴ・ドゥテルテ大統領による体制強化の下、同政権が掲げるインフラ投資の拡大や税制改革の進展が引き続き注目されます。

米金融緩和観測は追い風

さらに、金融政策の転換観測はアジア新興国にとって追い風となりそうです。米国の利下げ観測の台頭とともに、アジアでも金融緩和に動いており、2019年に入ってからインドは3回の利下げを決定。5月以降、マレーシア、フィリピン、豪州が相次ぎ利下げを決定しました。

中国は5月6日、中小銀行の預金準備率を10~11.5%から8%へと、5~7月に3段階で引き下げる方針を発表。6月7日には、易綱・人民銀行総裁が「金融政策を調整する余地は膨大にある」と言明しました。

昨年までの米利上げ局面では、通貨安対策を視野に、アジア各国中銀は金利を引き上げざるを得ませんでした。しかし、米利下げ局面への転換観測と各国の落ち着いたインフレ見通しを背景に、今後は利下げが各国景気の下支え役として働く見通しです。

<文:シニアストラテジスト 山田雪乃>