はじめに

スペインの名門サッカークラブ「レアル・マドリード」への移籍が決まった、日本代表ミッドフィルダーの久保建英選手。6月29日のFC東京vs横浜F・マリノス(味の素スタジアム)の試合終了後には、壮行セレモニーが行われます。

久保選手といえば、レアルの長年のライバルチームである「FCバルセロナ」の下部組織出身。欧州に移籍する際はバルサに復帰するのが既定路線だと思われてきました。しかし、フタを開けてみると、移籍先に決まったのはライバルのレアル。世界中のバルサファンの間では、今も疑問の声が渦巻いています。

今回の久保選手の決断の背景として、レアルとバルサが提示した入団後の処遇の差を指摘する向きもあります。なぜ、両クラブの提示した条件に大きな開きが生じたのでしょうか。


メッシも守った“伝統の制約”

「18歳を迎えた2019年6月、当然FC東京からもオファーを出しましたが、ビッグクラブと言われる複数クラブからも同様にオファーがありました」

久保選手の移籍が発表された6月14日、所属していたFC東京の大金直樹社長はこのようなコメントを公表しました。久保選手の獲得をめぐり、激しい競争があったことがうかがえます。

一部報道によると、レアルとは5年契約で、年俸は100万ユーロ(約1億2,000万円)とも200万ユーロ(約2億4,000万円)とも言われています。これに対し、バルサの提示した年俸は25万ユーロ(約3,000万円)とされています。

久保選手は、10歳で川崎フロンターレの育成組織を経て、バルサの下部組織に入団。しかし、国際間の移籍は原則18歳以上という国際サッカー連盟の規則にバルサが違反した影響で、日本への帰国を余儀なくされていました。こうした事情があるため、「いずれはバルサに戻るのでは」と見る向きもありました。

ただバルサには、下部組織の出身者は年俸の上限を25万ユーロとするなどの“伝統”がありました。これは、バルサ下部組織の先輩で世界屈指の名選手であるリオネル・メッシにも適用されたもので、一度はFC東京を経由している久保選手に対してもバルサは同様の姿勢で臨んだとみられます。

最近はバルサ人気に押され気味

バルサ側の提示した条件がレアルに比べて低かった事情はわかりましたが、それでは逆に、レアルはなぜバルサを大きく上回る条件を提示したのでしょうか。もちろん、久保選手の才能をそれだけ高く評価していたということが大前提ですが、状況証拠を整理していくと、レアルのマーケティング的な思惑も垣間見えてきます。

レアルには2000年代初頭、ジネディーヌ・ジダンやデビッド・ベッカムなどスター選手を次々に一本釣りし、「銀河系軍団」と呼ばれた時期がありました。スペインから遠く離れた日本でも、レアルの人気はうなぎのぼり。レプリカユニフォームや関連グッズが飛ぶように売れました。

しかし、最近の販売動向を調べてみると、状況は様変わり。通販サイト「楽天市場」を運営する楽天によると、レアルのレプリカユニフォームやタオルなどは、2010年から5年ほどは右肩上がりで売れていましたが、ここ2、3年は、停滞気味だといいます。

こうした中、レアルに取って代わる形で売り上げを大きく伸ばしたのが、ライバルチームのバルサでした。楽天が2017年にバルサとスポンサー契約を締結してからはバルサ人気が一段と上昇しており、同社は「単価の高いレプリカユニフォームの売り上げが大きく、子供用や、30~40代の男性が買うケースが多いです」と説明します。

<写真:ロイター/アフロ>