はじめに
秘密は「空白時間を埋めるダイヤ」にあった
「サンライズ出雲」と「サンライズ瀬戸」は、1998年に運転を開始し、多くのビジネスパーソンや観光客に支持されました。それゆえ、夜行列車の廃止が相次ぐなか、奇跡的に生き残ることができたのです。豪華寝台特急のように、ニーズが景気に大きく左右されなかったことも、大きな要因です。
その秘密は、ダイヤにあります。寝台を個室化したことや、輸送需要がとくに高い東海道・山陽ルートを通ることだけでなく、航空機や新幹線の空白時間に移動できるようにダイヤを組むことで、ニッチかつ安定したニーズをつかんだのです。
このダイヤは、とくに人口が多い首都圏の人が利用しやすいように設定されています。下り列車は深夜22時に東京駅を出発するので、首都圏で仕事などの用事を終えてから山陽・山陰・四国方面に向かうには便利です。近年は首都圏から「サンライズ出雲」に乗って、パワースポットとして注目を集める出雲大社に行く人が多いようです。
また、上り列車は大阪駅を深夜0時すぎに出発して、東京駅に朝の7時すぎに到着するので、東海道新幹線の最終列車よりも遅く大阪を出て、始発列車よりも早く東京に着くことができます。こうした大都市間輸送の穴埋めをしているのも、多くの利用者に支持されている理由です。
サンライズの車内
車両製造から20年経ち、先行きは?
ただし、今後も長く走り続けるかはわかりません。寝台電車は製造から20年以上経過しましたし、その間に他交通はさらに発達しました。今後は人口減少や地方の衰退で、鉄道の経営環境はますますきびしくなり、寝台特急の車両更新に踏み切る余裕もなくなるでしょう。それゆえ、日本から、毎日走る夜行列車が完全に消えてしまう日はそう遠くないかもしれません。
それは、夜行列車が好きな方には残念なことでしょう。ただ、長距離移動手段の選択肢が増え、より多くの人が快適に旅行できるようになったことに目を向けるほうが、私は建設的だと思います。