はじめに
今、不登校にひきこもり、虐待や貧困など、大きな問題に悩み苦しんでいる子どもが多くいます。子ども達は誰かに助けてもらいたいと思いながらも1人で悩み、将来に不安を感じています。
『どうしたらいいかわからない君のための 人生の歩きかた図鑑』は、そうした救いを求める子ども達や、困っている子ども達を救いたいと思っている大人達のために、それぞれの悩みの相談先や解決方法をまとめた1冊です。この本を著したノンフィクション作家の石井光太さんに、今の子ども達が置かれている状況や、著書に込めた思いについてお話をうかがいました。(文責:日本実業出版社)
どうしたらいいかわからない子ども達が増えている
子どもの悩みに寄り添ってきた、石井光太さん。
ーここ数年で増えている子どもの悩みはありますか?
僕が取材を続けてきた中で感じるのは、今までの子どもの多くは「いじめられたから」とか「学校の先生が」といった明確な理由があって、不登校になっていました。
でも最近は、大人からすると一つひとつは些細な事、たとえば友達とケンカした、成績が落ちた、好きな子とうまく話せなかったとか、そんな少しずつのつまずきから、なんとなく不登校になる子が増えていると聞きます。
その“なんとなく”をもう少しくわしく分析してみると、人と人との関係の中で自分のポジションを見つけられず、気づけば居心地の悪さから孤立していく子が多いようです。とくに、今の子どもは情報をたくさんの方法で手に入れていて、頭でっかちになっているように感じます。社会一般にある価値観・常識に全てを当てはめようとして、そこから少しはずれると不安になってしまう。それが生きづらさにつながります。
そうしてレールから外れた瞬間に、居場所を失い、福祉の救いも届かない、いわゆる“漂流”状態になってしまう。学校を休みがちだった子が、ずっと来なくなって、卒業式にも居なかった……。というように、いつのまにか「消えた」同級生がいたという人も少なくないですよね。
ー漂流するか、あらたな道を見つけられるかの境目は何でしょう?
それはやっぱり、どこに助けを求めていいのか、その先でどのようなサポートを受けられるのかを知っているかどうかが大きいと思います。ただ、SOSを求めることは子どもにはとても勇気がいることなんです。
相談することで、もっと悪い方向にいってしまうんじゃないか、自分はどうなるのか……って子ども達は不安を感じるんです。「相談窓口に電話をかけてね」と、いわれても、実際にかけられる子ってほとんどいないと思います。
この本の1つの目的が、それを可視化するということでした。この番号にかけるとどこにつながるのか? 悩み相談のとき、名前や住所は聞かれる? そんな疑問にこたえています。
また、いったんレールを外れた子どもが漂流してしまう理由として、様々な挫折が積み重なることで、現状を変える気力をなくしてしまうというのがあるのかなと思います。
大人も感じることがあるかもしれませんが、自己責任論だったり失敗を許さない風潮が強まっていたりして、1回失敗した子は挫折を乗り越えづらく、さらにドミノ式に悪い方向に倒れてしまう。中卒や高卒の子が社会で一生懸命生きようと思っても、それが受け入れられないし、認めてもらえない。これでは彼らが社会の中で居場所を無くすのはのは当然だといえます。
そうした状況は子ども一人の力では覆すのは難しい。だったら、そうした人生をはずれてしまった子でも受け入れる職場を紹介してくれる窓口に相談してみるのも一つの手です。自分の状況をわかったうえでサポートしてくれる職場で成功体験をつんでいく。そうした自己肯定感を高める場所を見つけることで、生きやすい人生へとつなげることができます。