はじめに
どんな人生でも、人って素晴らしい
ー虐待やいじめ事件を取材し続け、本を執筆し続けるモチベーションは何ですか?
一言でいうと、人が好きなんです。とても悲惨な状況の中でも、希望をもって生きている人達がいる。たとえば、海外のスラムの町で、子ども達が貧困によって栄養失調になりながらも、普通にサッカーをしたり恋愛したり結婚したりっていうのを見ると、なんだか感動するわけです。そんな風に、色々な人生を取材して、人間や人生は素晴らしいということを伝えたい。
素晴らしいこと、美しいことだけでない、しんどい出来事やつらいこと、そういう人間本来のエネルギーによって世界がなりたっている。だからこそ、人は魅力的だと思うし、人生を生きる価値があるんだなと思うんです。
だから、ノンフィクションを書くときには、マイナス面も含めた人間の不思議さや魅力を書きたい。社会とか政治じゃなくて、人間を書きたいんです。
ー石井さんはデビュー当時から“子ども”の問題を扱った作品を数多く執筆されていますが、それはなぜなのでしょうか?
単純に、子ども達には幸せになってほしいからです。だからこそ、今回の本でも、困っている子ども達に「こんな生きかたもあるよ」「だいじょうぶ。人生はきっとうまくいく」という道を少しでも示せたらと思い執筆しました。
色々な出来事によって、一旦レールからはみだしてしまってもいいんです。「社会のルールに100%沿って生きるのはつらい」のは当たり前の話。学校の中で行き詰まっている子には、型からはずれた価値観や楽しみ方も世の中にはたくさんあること、そして、その価値観を認めてくれる大人もたくさんいることを知ってほしいです。
人と関わることが少なくなった時代だからこそ、関わる場所をきちんと示してあげる。そうした役割をもつ本が必要なのかなと思っています。現場の大人達はみんな、子どもが相談しにくるのを待っている。ただ、大人達は広報をしているつもりでも、それが子ども達には届いていないんです。だから、僕達のような作家やメディアが、その橋渡しができれば、と考えました。
ですから、子どもを助け、導く役割を担う教師や親といった大人達にもぜひ、この本を手にとって知っていただきたいです。そしてこの本が、子どもの悩みに風穴をあけ、今までとは違う人生の歩きかたを見つけるヒントになることを願っています。
石井 光太(いしい こうた)
1977年、東京生まれ。『物乞う仏陀』でデビューし、国内外を舞台したノンフィクションを精力的に発表。『レンタルチャイルド』『浮浪児1945–』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『漂流児童』など、子どもの問題を扱った作品も多い。児童書に『ぼくたちはなぜ、学校に行くのか。』『みんなのチャンス』『幸せとまずしさの教室』『君が世界を変えるなら(シリーズ)』などがある。他に小説など著書多数。
『どうしたらいいかわからない君のための 人生の歩きかた図鑑』Facebookページはこちら
人生の歩きかた図鑑 石井光太 著