貨幣だけが"債権"ではない

――ご飯代だけで子供を見てもらえる、と。

子育てをしていくうえで必要なのはお金じゃなくて、人なんです。学習塾に払う「お金」が必要なのではなくて、勉強を教える「人」が必要なんです。私の場合ネットワークが極端なので、博士とか修士を取った人たちがうちに遊びに来るので、塾とかは必要ないんですよ。知的な会話をしてくれるので、学習塾に行かせなくても知的水準が高まると思っています。

子供の養育費に2,000万とか言われているのは、「2,000万円分の人」のことなんですよね。例えば食費だって加工と輸送と調理だって人がやっていることにかかるお金です。人を介したものだから人件費にお金を払っていると考えられます。だったら、自分とか仲間たちで済ませてしまえばよいわけです。都会だと自給自足は難しいですが、ある程度は賄えます。

――すべては人、という考えに至ったのは?

私は経済学部出身で、経済学を勉強していると、貨幣というのは相対的なものであるということに気づくわけです。貨幣というのは価値の一つの形態にすぎない、と。絶対的な基準ではないんです。お金の価値だって一定ではありません。なのに「2,000万円」という金額ばかりに皆さんはとらわれてしまいがちです。

「2,000万円」ではなくて、「2,000万円分の何か」だと考えるべきだと思います。それを分解してみると、公共サービスで展開されていたりする。もしくは、ずうずうしく人にお願いすることで、多くは解決できます。

――そう簡単にお願いできるものでしょうか?

私は特別な人間ではありません。ただ、自分も「ただ働き」しているんです。ほかの人が困っているときに駆けつけていた、ということ。その親切が貯金のようになって貯まっていくんです。その人から直接返してもらわなくてもいいんです。私もいろんな人を手助けしているので「いつも手助けしているから」という理由で助けてくれる人がいるんです。債権や債務というのも貨幣だけじゃないんだと思わせてくれます。

だから、お金がなくて結婚をためらっている人は、子連れの人のところに行って手伝いするのが一番意味のある事ではないでしょうか。それは確実に「投資」になります。

――子育てだけではなく老後の世話にもいえることでしょうか?

“親族ネットワーク”も、「助けてもらったから助ける」の親族版で、相互保険の一種。対価なくやっているつもりだけど、じつは対価はあります。

老後の面倒は自分で、という風潮もよくないですね。別に私は子供に面倒を見てもらう気もないですけど、「いざとなったらお互い頼る、助ける」というのはネットワークがあるかないかにかかっています。だから、いまいる老人を助けないと、自分も老人になったときに助けてもらえないぞと思っています。

――貯金はしなくてもいい?

お金は「ごく特殊な債権」なので、お金があるだけでは厳しいと思います。お金の価値も(相対的に)下がっている。新入社員の出世欲が落ちていると聞きます。ワークライフバランスを重視して、報酬が上がっても働きたくない、というわけですから、下の世代に「お前の介護なんかしたくないよ」と言われてしまったら、いくらお金を出しても面倒を見てくれなくなるんです。ただお金を貯めていくというのは、案外心細いものなんですよ。

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次回は、えらてん氏自身の結婚への考え方について話を聞いてみます。

「しょぼ婚」のすすめ」(KKベストセラーズ)

「しょぼ婚」のすすめ

<著者>
えらいてんちょう
1990年12月30日生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
バーや塾の起業の経験から経営コンサルタント、YouTuber、著作家、投資家として活動中。2015年10月にリサイクルショップを開店し、その後、知人が廃業させる予定だった学習塾を受け継ぎ軌道に乗せる。2017年には地元・池袋でイベントバー「エデン」を開店させ、事業を拡大。その「エデン」が若者の間で人気を呼び、日本全国で10店、海外に2店(バンコクと中東)のフランチャイズ支店を展開。各地で話題となっている。昨年12月には初著書『しょぼい起業で生きていく』(イースト・プレス)を発売し、ベストセラーに。朝日新聞ほか多くのニュースメディアで取り上げられたことで幅広く支持されている。本書のほか『ビジネスで勝つネットゲリラ戦術詳説』『静止力 地元の名士になりなさい』と合わせて3冊を同時刊行YouTube「えらてんチャンネル」のチャンネル登録者数は約14万人(2019年6月現在)。