はじめに

株式市場は、ニューヨークダウが最高値を更新するなど米国が好調な値動きを続けています。一方で、日本や欧州では上値が重たい展開が継続しています。日本の株式市場に有望な投資先はないのでしょうか。

実は今、資金が流入しているのがREIT(不動産投資信託)市場です。今回はREITに投資する際に注意すべきポイントについて解説します。


なぜREITなのか

まず、米国と日本の株式市場で、このように明暗が分かれた理由はなんでしょうか。米国では、中央銀行にあたる連邦準備理事会(FRB)が今月利下げに動くと見られ、株式市場を活性化させています。一方で、日本や欧州はこれ以上の金融緩和余地が乏しいと見られ、米国に資金が一極集中しているからと考えられます。

日本の金融緩和の余地は限られていますが、FRBが利下げ姿勢に転じたことで、世界的に金利は低下基調となり、日本の金利も更に低下しました。

一方、REITの配当原資は不動産の賃貸料などですが、東京のオフィス空室率を見るとかなりの低水準が続いており、ビルの賃料も上昇基調を維持しています。このことから、比較的安定した配当が期待され、REIT(不動産投資信託)市場に資金が流入しているのです。

REITの好調は続く?

このような資金の流れは今後も続くのでしょうか。1つの参考になるのが、2006年~2007年のREITの値動きです。グラフは、2005年から2010年までのTOPIXと東証REIT指数、及びアメリカのFF金利の推移を示したものです。


株価とREIT指数、金利の推移

2005年から2006年にかけて小泉政権による規制緩和と世界的な景気拡大により、TOPIXは大きく上昇しましたが、2006年以降は上昇が一服し、高値圏でのもみ合いが続きました。

一方の東証REIT指数は、FRBが2006年まで続けた利上げ路線を取りやめる中で、相対的に高い利回りが投資家に着目され、2007年前半にかけて一段高となりました。現在の東証REIT指数の動きは、この局面に似ていると考えられるのです。

このように、金利が低下する局面で期待が集まるREIT市場ですが、一方で注意すべきポイントもあります。

2007年を振り返ってみると、東証REIT指数は5月に高値を付けましたが、その後サブプライムローン問題などがアメリカで発生し、米国が利下げを続けるなかで、東証REIT指数は下落に転じていきました。

現状では、サブプライムローン問題のような金融面での問題は発生していませんが、実体経済は減速しつつあります。これが不動産賃料にも影響を与えるような状況となった場合には、金利が低下してもREIT市場から資金が流失する可能性があります。REITに投資する際には、金利動向に加えて、毎月発表されるオフィス空室率などにも着目しておくと良いでしょう。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎>

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