はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する野瀬大樹氏がお答えします。
ニュージーランド、オーストラリア、またはアメリカドルなど、外貨預金のなかではどれがおすすめでしょうか? 運用年数などのアドバイスもいただけるとうれしいです。
(30代前半 既婚・子供1人 男性)
野瀬: 外貨預金を始めようと思っている方は、高金利に魅力を感じていることが多いと思います。しかし、基本的に「高金利=高利回り」ではないことに注意すべきです。外貨預金の表面上の利率は将来の為替レートで調整され、円で運用するのも、外貨で運用するのも理論的には同じになるからです。
例えば、米ドル金利が3%で円金利が1%だったとすると、金利差が2%存在することになります。その場合、1年後の米ドルは円に対して2%下落し、円高になるように将来の為替レートは設定されます。1年後に実際の為替レートがいくらになるのかはわかりませんが、金利が高い通貨はせっかく投資しても為替差損によって金利分が帳消しになってしまうことは珍しくないのです。
実際、高金利通貨を狙って新興国の通貨で外貨預金をした結果、高い金利は受け取れたものの、為替が急落してトータルでは損をしてしまったというケースはよくあります。
為替手数料に注意
また、日本国内の外貨預金は為替手数料が高く、手数料込みで考えるとリスクに見合ったリターンが得られないという問題があります。金利だけではなく手数料も勘案した手取りのリターンがどうなるかを計算することが大切です。
例えば、米ドルの外貨預金で為替手数料が買い・売りそれぞれ1ドルにつき1円とすれば、手数料率は片道で1%、往復で2%になります。つまり1年間の金利が2%だったとしても、為替手数料で金利のほとんどが消えてしまうということです。
外貨資産を持たないこともリスクだと思いますが、どのような商品を選択するかを間違えてしまうとせっかくの投資で目的が達成できない可能性があります。
ベースはドルとユーロ
外貨預金に限らず、外貨投資を行う場合は通貨配分が重要です。ベースとなる投資対象通貨は、ドルとユーロになります。この2つの通貨を中心にそれ以外の通貨にも分散させていくことが基本です。その上で、自分の通貨に対する相場観があれば、それを反映させていくのがよいでしょう。ちなみに私が保有している外貨は、ユーロよりも米ドルに大きく比率を傾けています。
外貨投資は、短期の利益を目的にするべきではないと私は思います。自分の資産全体の配分を考え、円に偏りすぎていることを修正していく過程で、外貨資産を保有すべきだということです。
そのような視点からすれば、いきなり外貨預金のような外貨投資をするのではなく、まずは資産全体の通貨配分を考え、そのフレームワークのなかで、通貨の選択を行っていくことがよいでしょう。