はじめに

持ち物や生活スタイルなどで明らかに「お金がありそうな生活」を送っている人、いますよね。

たとえば、芸能人などのいわゆる「セレブ」といわれるキラキラと華やかな人たちは、見るからに幸せそうです。そんな雰囲気は、リアルな本人からだけでなく、その人のSNSなどで積極的に発信されていることも多く、「自分には手の届かない世界」と思いつつも、つい見てしまう。

でも、ちょっと待ってください。お金持ち=幸せ、と決めつけてよいのでしょうか。第一生命経済研究所では、今年1月に「今後の生活に関するアンケート」を実施しました。そこから、お金持ちが幸せなのか、を検証してみました。


お金持ちは幸せか

結論からいえば、「その傾向が認められる」という意味で、答えは「YES」です。

第一生命経済研究所の調査結果によれば、収入が低い人で幸福度は低く、収入が高いと幸福度は高いことがわかっています。経済的に恵まれていることと、幸福感の高さには一定の相関があります。

しかし、よくよく幸福度の分析を行うと、さらに周辺の状況がみえてきます。たとえば、実際の収入額の高低よりは、日常的に精神的なゆとりや経済的なゆとりがあると「感じているか否か」の方が、幸福度得点に影響しているようなのです。

つまり、高収入であることが直接的に幸福感の高さにつながっているというよりは、「お金がある」ことがこうしたゆとり感を生む1つの要因となっており、その結果幸福度が高くなっている可能性があります。

自分の幸福感を0~10点(10点が最も高い幸福感)で自己評価してもらい、その平均点を精神的・経済的ゆとり感の有無別に比べました。その結果、収入が高くなくても精神的・経済的ゆとりが「ある」と答えた人は、収入が高くてゆとりが「ない」とする人よりも幸福度得点が総じて高い傾向がみられました。

このことは、収入の高低よりも自分の生活におけるゆとりを自分自身がどう評価しているかが、幸福感により影響を与えている可能性を示唆しています(図表1)。 


図表1 精神的・経済的ゆとり感の有無と収入別に見た「幸福度得点」の平均値

収入が高くなくても幸せ

単純に収入額の高低が幸福度に直結するといえないということであれば、収入が低くても幸福感が高い人、もしくは収入が高いのに幸福感が低い人とは、経済的要因以外にどのような点に特徴があるのでしょうか。分析上、「収入が高くない人」を世帯年収300万円未満とし、その中で幸福感が高い人が、どのような状況にあるのかを分析しました。

その結果、収入が高くなくても幸福感が高い人は、健康状態が良く、「今の仕事にやりがいを感じている」「収入が少なくてもやりたい仕事をしたい」と考えるなど、仕事自体を楽しんでいる傾向がみられました。

また、「身辺のトラブルを一緒に解決してくれる人がいる」「病気で寝込んだときなどに手伝ってくれる人がいる」といった、「つながり」をもっている人が、全体値と比べても高い傾向にあります。加えて、「一緒に余暇や休日を楽しむ人がいる」についても全体値より高い値を示しました。

仕事への充実感や人とのつながりがあることが、幸福感を高める上で重要な要素であるといえそうです。

図表2 年収300万未満の人の健康・仕事・つながり(幸福度水準別)

注:幸福度得点を低位群・中位群・高位群に分類し、それぞれの幸福度得点群の人における各項目への回答割合(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」の合計)を示した。顕著な差が見られた項目について掲載。

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