はじめに

お金持ちなのにアンハッピーな人

では、リッチなのに幸福感が低い人とは、どのような人なのでしょうか。世帯年収1,000万円を「収入が高い人」とし、幸福度得点の違いを分析したところ、収入が高くても健康状態がよくない人では幸福度得点は相対的に高くないことが示されました。

また、仕事へのやりがいが低い人や、今の仕事が自分に合っていないと考えている人では、経済状態がよくても幸福度得点は高くありませんでした。

また、つながりについても、一様に「ない」とする人で幸福感が低く、特に「能力や努力を評価してくれる人がいる」かどうかが幸福度得点の高さに大きく影響していることも確認されました。やりがいのある仕事をし、自分を認めてくれたり気づかってくれたりする人がいなければ、リッチな人であってもハッピーな人にはなれないこともあるのです。

マネーデザインを行い、人とつながる

生命保険文化センターの意識調査によると、「必要と思われる老後の最低日常生活費」は、夫婦2人で月額平均で約22万円、「ゆとりある老後生活費」としては夫婦2人で月額平均で約35万円とされています。こうした情報で、「自分には老後生活は無理かも」と不安に思いつつも、思考停止してしまい、自分の状況を具体的に把握していない人が、実は多いのです。

「不安だから調べる・確認する」はずが、「今考えても、社会や制度が変わるかもしれないから」「何だかよくわからない」という理由(言い訳ともいう)で、検討を回避してしまうのです。確かに社会は刻々と変化する上に、人の生活は多様で、かかるコストも人によって異なります。夫婦2人で月額22万円も必要ない人もいれば、月額35万円で足りないという人もいるでしょう。実際、かの「スーパーボランティア」O氏は、月額5.5万円の年金で十分1人暮らしをしているそうです。

加えて、社会には様々な制度があり、それらを有効に活用することでサポートを得られたり、支出を抑えたりすることができるため、情報収集をきちんとしている人には多くの選択肢があります。しかし、自分の実情を把握しようとしない人は、そうした情報収集もしていないことが多く、制度を利用することができません。「制度が複雑で理解できない」「手続きが煩雑で面倒」という声(言い訳ともいう)も聞かれます。

そうだとすれば、ここでも重要なのは「人とのつながり」なのです。企業や専門家への相談を含め、信頼できる相談相手とつながることは、ライフデザインにおける重要な手段となります。「自分自身で学ぶ」か、「学んだ人とつながる」か。これが、今後のマネーデザインにおけるキーとなることは間違いないでしょう。

人と「つながる」ことのメリットは、コミュニケーションでもたらされる精神的なゆとりや楽しさによって、日々の幸福感が高められる点だけでなく、自分の生活における経済面・制度面でのサポートやリソースでもあるのです。

心のゆとりとつながりで実現するハッピーライフ

冒頭で述べたように、リッチな人にハッピーな人が多い点は事実です。ただし、収入額の高低よりも自分自身にゆとりがあると感じていること、自分の仕事にやりがいや充実感をもち、人とのつながりがある人では、必ずしも収入が多くなくても、幸福感が高いケースが多い点が確認されました。

老後に漠然と不安を感じ右往左往するのではなく、まずは自分自身が何に幸せを感じるのか、そのために何をしておかなければならないのかにまで立ち返って、老後のライフデザインを行うことが求められます。目指すのは「ハッピーライフ」であり、お金はその手段の1つにすぎないのです。

この記事の感想を教えてください。