はじめに
「損」は防げないけど「大損」は防げる
今回、ちょっと不運だったAさんですが、唯一の救いはきちんと手続きをしたことです。というのも、移換の手続きをしないでいると、自動移換されてしまうのです。
自動的に移換してくれるなら楽…と思ったら大間違い。自動移換にはたくさんのデメリットがあります。
・自動移換にあたって、4269円(税込)の手数料がかかる
・資産がすべて現金の状態で管理され、運用ができない
・毎月の管理手数料51円(税込)が引かれる
・自動移換中は確定拠出年金の加入期間とならないため、受給のタイミングが遅れる可能性がある(加入期間が10年以上ないと60歳から受け取れない)
・自動移換されたお金は再び企業型DCやiDeCoに移換しなければ、年金として受け取れない(しかも、移換時に1080円(税込)の手数料がかかる)
運用ができず、手数料ばかり引かれるのですから、お金は確実に減っていきます。また、確定拠出年金を60歳から受け取るには、10年以上の加入期間が必要ですが、自動移換されたままだと加入期間になりません。これによって、最大65歳まで受給のタイミングが遅れる可能性があります。
これだけのデメリットがあるのですから、みんなきちんと手続きしているだろう……と思ったら、これも意外とされていないのです。
国民年金基金連合会「平成29年度国民年金基金連合会業務報告書」によると、平成29年時点の自動移換者の人数は73万4243人。そのうち、資産額が0円になっている人が30万7325人もいるそうです。こうなってしまったら大損どころの話ではありません。
自動移換に刺せないためには、退職日の翌日を含む月から6カ月以内に手続きする必要があります。新しい仕事に慣れるのに大変で、つい手続きを忘れる……ということもあるかもしれませんので、十分に気をつけてください。
企業型DCをしている人が転職すると、新たな企業型DC、またはiDeCoに資産を移換する手続きが必要になります。このとき、資産はいったん売却されるため、損失を抱えている場合は損失が確定してしまいます。現状、これを防ぐ方法は残念ながらありません。
だからといって手続きをしないのはもっとよくありません。企業型DCにせよiDeCoにせよ、すみやかに手続きをしておきましょう。