はじめに

産業高度化でユニコーンも登場

ちなみに、産業高度化を進めているのは、インドネシアだけではありません。

たとえば、タイは先進国の仲間入りを目指して「タイランド4.0」と名付けたデジタル産業の推進政策を実施しているほか、同様に中所得国からの脱却を目指すマレーシアは「ビジョン2020」というスローガンを掲げ、2020年までに先進国入りを果たそうとしています。

また、インドは「メイク・イン・インディア」というスローガンの下、外資を呼び込みながら国内の製造業を発展させようとしています。各国ともに、自国産業育成や産業高度化を意識している政策という点でインドネシアの政策方針と似通っており、これまで以上に外資誘致合戦が激化することになりそうです。

その中で、実際ここ数年はインドネシア発のユニコーン企業(時価総額が10億ドルを超える未公開企業)が数社出てきました。配車サービスなどを手掛ける「GO-JEK」、宿泊予約サイトなどを運営する「Traveloka」、Eコマースなどを手掛ける「Tokopedia」と「Bukalapak」の4社です。

このうち、GO-JEKは近年急速に業容を拡大しており、直近はついに時価総額100億ドル超企業である「デカコーン企業」に仲間入りしました。インドネシアで初のデカコーン企業です。また、この4社以外にも、インドネシアにはユニコーン企業予備軍が数社存在しており、今後数年の間に、主要企業の顔触れが変わってくる可能性があります。

2045年に向けた課題は?

現時点ではここに挙げたインドネシアのユニコーン企業はいずれも非上場ですが、影響力、市場シェア、知名度などの点でインドネシアを代表する企業であることは確かです。今後、インドネシア政府が産業高度化政策を進めていく中で、牽引役になりうる存在として引き続き見守っていきたいと思います。

なお、近年のインドネシアでは、国内での改革を進めようとすると既得権勢力からの反発にあって頓挫する、というケースが多くみられました。今後のジョコ政権も抵抗勢力との戦いが続きそうです。

そんな中、3月には、インドネシアにとって永年の悲願であった「地下鉄(MRT)の開通」がようやく実現しました。決して順風満帆とはいえませんが、少しずつ状況に変化が出始めていると思います。独立100周年の2045年に向けてインドネシアが、どのように政策運営を行なっていくか注目されます。

<文:市場情報部 アジア情報課長 明松真一郎>

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