趣味

77人の"店主"が「シェアする書店」はどのようにして誕生したのか

「本の無人販売所」の店主が始めた吉祥寺の”ブックマンション”

お客さんはコミュニケーションを求めている

――「シェア」については、わかりました! では、今回、無人から人と運営し、店頭にも立つ有人になったことによって、何か、感覚の違いってあったりしますか?

まだ始めてからそんなに経っていませんが、お客さんは、コミュニケーションを求めているんだなって思いました。昨日もふらっと近所の成蹊大学の女子大生が来たんですけど、最初は、イヤホンをしていたので、そっとしてたんです。でも、イヤホンをとったので、ふいに「どうやってこの本屋さんを知ったんですか?」って聞いたら、「工事をしているときから気になってて来ました」って。結局、それから1時間半くらいいて。僕の息子もいて、ポケモンをしていたので、ずっとポケモンの話をしたり。最後は、ノートに、ひと言書いてもらって。ほかには、静岡のほうからわざわざ来て、ずっと話し込んで長く滞在してくれた人もいます。

中西さん
現在、まだ棚の準備ができていないスペースには、中西さん所有の本が置かれている。「楽天」のバリバリのビジネスマンだった中西さんだが、意外にビジネス書が少ない。

そう考えると、買い物って、単に買うだけじゃなくて、会話とかそれに付随するものを求めているんだなって。必ずしも利便性や即時性だけを追求しなくてもいいんだなって思いました。個人店の場合は、そこが売りになるんだろうなと。また、「BOOK ROAD」はひとりで運営しているんですけど、今回は、複数人で運営しています。有人っていうのも、有るという「有人」ではなくて、一緒にやっている人たちとの距離感が凄く縮まっていて、「友人」販売というほうがしっくり来る感じがします。

アマゾン対策は考えたことはない

――書店ビジネスが厳しいなかで、この業界に飛び込むのに勇気は入りませんでしたか?

本を読む人というのは、いつの時代にも絶対いるじゃないですか。本好きも。マーケットがちゃんとあるのでそこは心配してませんでした。ないところから作れって言われたら、困ってましたけど。そのなかでも、単に本を売るんじゃなくて、独特なコミュニティを作って、そのコミュニティのファンの人に来てもらえる店にしようと思っています。そこがうまくいけば、来てもらえるんじゃないかと思っています。

わたがし
レジ後ろにあるわたがし製造機は、本を買うと体験することができる。「僕がほしかったんです(笑)」と中西さん。

そもそもブックマンションに来て、ほしい本がピンポイントで手に入るということって絶対ないと思うんです。なんとなくこれいいかもと本棚を探索して、この仕組みに共感して買ってくれたりする人がほとんどだと思います。アマゾン対策などは考える必要がないですし、大規模書店のように品揃えのよさは最初から考えていないんです。だから、書店経営については、難しいと思ったことがないですね。

なぜ書店経営を難しくないと思えるようになったかというと、2013年から続けてきた無人古本屋の経験なんです。「BOOK ROAD」には、自分がほしいと思ったおそらく本はないはずなんです。でもわざわざ三鷹駅に降りて15分かけて訪ねてきてるということもあって、何か1冊は買ってくれていると思うんです。富士山に登ったらせっかくだし600円でもカップヌードル食べるみたいな感じで。そこまでして、来てもらえるような、愛される本屋になればいいんです。同様に、「ブックマンション」も、そうなる仕組みを強化する必要がある。

中央集権ではなく分散型

――なるほど。では、「ブックマンション」が愛される書店になるにはどうすればよいと思いますか?

僕らの書店は、何か凄い強力なこれというものはないんです。でも、棚を借りていただいている77の借り主のみなさんには、それぞれがコミュニティを作ってくださいと言っているんです。一人ひとりの力は、小さいけれど、各自がSNSなどで発信して、独自のコミュニティを作っていけば、小さな力が大きくなって、伝播していくと思うんです。今までだと、Aさんという人が、凄いリーダーシップを持って、本にも詳しくて、全体を設計して、選書してという本屋が強かったと思うんですが、僕らの本屋はそういうトップダウンではなくて、ボトムアップ、中央集権じゃなくて、分散型。そのほうが、思いが伝わると思うんです。例えると、ひとりの力持ちが、物を持ち上げるよりも、77人の普通の人がやるほうが、楽に持ち上げられますよね。そんなふうに、広げていければと思っています。

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