はじめに

反社を連れてくる債務者

――実際、彼らの多くはちゃんと返済完了にこぎつけられるのでしょうか?

返済が滞って担保を売ってもらうのは最終手段ですが、まあ全体の6~7割がそう(最終手段に)なりますね。担保を売ってお金を返してもらうか、僕らがもらうことで借金をチャラにしたりします。

――滅多にハッピーエンドでは終わらない仕事なのですね。

何とか借金を返してもらって、立ち直って「今は頑張ってます」と連絡をくれる人もいます。借金を本当にきれいに返してくれる人はその後も連絡をくれるし、他の顧客を紹介してくれたりもします。ある経営者は銀行から借りられなくなって、うちから15%の利息で3000万円を借りていきました。ちゃんと3年くらいで元通りに返してくれましたよ。うちも相当儲けさせてもらいましたが、いまだにお中元が(その経営者から)送られてきます。ただ、これはスーパーレアなケースですね。

サラリーマンの顧客も何人かいます。ただ、それなりのポジションの人がうちに来る際は、トラブルが発生してそれを埋めるためにお金を借りに来るケースが多いですね。

――銀行や親族などに表立ってお金を借りられないような、ヤバいトラブルが会社などであったのでしょうね。こうした多重債務者と、日々何を考えながら向き合っているのですか?

僕らも債務者全員のことを毎日考えていたら持たないので、淡々と「今日の利払いは誰と誰」などと、なるべく(気持ちを)切り替えてやっていますね。この仕事は債務者との戦いです。対人業務でやりがいはほぼ感じられません。隠していたお金を見つけて差し出させるとか、新しい法律の知識を身に着けると言った中で、自己満足は感じていますが……。

――逆に厄介な債務者も少なくないようですね。テツクルさんの本の中では、債務者が「反社」、つまりは暴力団のような犯罪組織の人間を連れてきて取り立てに対抗する場面もあります。これだけ世間で暴力団追放が叫ばれている今、まだそんな人がいるのですね。

反社に頼る債務者は、若い人よりも50、60代が多いですね。そういう人が70代の反社の人を連れてきたりします。業界に食い扶持のないおじいちゃん(の反社)が、こういう仕事を引き受けたりします。そういう人は昔のままの頭で、常識が通じなかったりするので面倒くさいですね。

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