はじめに
矢印で書いてある「答え」には何の意味もない
――何かに悩んでいるときに、本を読めば答えが書いてあると考えてしまう人は多いと思います。本を買うからには、そこに解決があると思っている。でも、自分がどういう行動を取りたいのかも、自分で考えるべきですね。
中野さん: 本に答えを求めるのって、問題集を買って答えから見るようなものですよね。この20年、小泉政権のワンフレーズ・ポリティクスやビジネス書などの影響もあって、日本人は答えを先に見ることに慣らされてきてしまったように思います。Twitterというメディアも出てきてワンフレーズ・カルチャーが盛り上がったし、それに私たちも乗ってしまっているのかもしれない。でも、自分が答えを「作る」力を削いでいる現状に気づいてほしい。
スーさん: 「これが正解です」と矢印がさされていた答えが、自分にはなんの意味もなさないこともある。これからの時代は与えられた回答ではなく、文脈から答えを導き出せる力が必要だと思います。
中野さん: 最短で答えにたどり着けばいいのだったら、脳なんか要らないと思いますけどね。この本には「モヤモヤを解決する」のではなく「モヤモヤを楽しみましょう」という思いを込めたつもりです。
スーさん: そこからどう考えるかは、読む人次第ですよね。
「女に生まれてモヤってる!」(小学館)
<著者>
ジェーン・スー
1973年、東京生まれの日本人。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』のMCを務める。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎文庫)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)、『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(文藝春秋)、『私がオバさんになったよ』(幻冬舎)など。
中野信子
1975年、東京都生まれ。脳科学者。医学博士。横浜市立大学客員准教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンで研究員として勤務後、脳科学についての研究と執筆活動を行う。著書に『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』(幻冬舎)、『サイコパス』(文藝春秋)『キレる!』(小学館)など。