はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する内藤忍氏がお答えします。
結婚をした2年前に、旦那に借金があることが判明しました。借りていたのは、銀行、クレジット、消費者金融からトータル400万円ほど。今年6月にすべて完済しました。
これから、2人目の子供が生まれ、今の家では手狭になるので、できれば住宅を購入したいと考えています。 旦那には「借金を完済しても、しばらくは借りていた履歴が残るからローンは組めない。2年後くらいなら大丈夫だと思う。それまでに頭金を貯めて購入しよう」と言われました。借金の滞納はありません。
また、一度審査を通して借金履歴が出てしまうと、ローンを組める時期がもっと遅くなるから、「今は審査しない方がいい」と言われています。私は子供が幼稚園に入る前に引っ越して、住宅を購入したいと思っているのですが、ローンを組むことはできないのでしょうか?
現在の旦那の年収は640万円、勤続年数10年以上、4,500万円ほどの住宅を購入できたらと思っています。 ローンは旦那だけで組みます。今現在、ほかにローンは組んでいません。
ローンが組めないのであれば、今住宅を見に行ってもムダになるのでご相談させていただきました。やはり借金を完済しても、しばらくはローンが組めないのでしょうか。 また、今、家を買うべきなのか、それとももう少し現状のまま貯蓄すべきなのか教えてください。
(30代前半 既婚・子供1人 女性)
マイホームを持つべきかどうか
内藤: 住宅ローンが組めるかどうかは、それぞれの金融機関が行う審査の方法により変わってきます。よって実際に相談してみないとわかりません。
延滞もなく、返済を完了されているのであれば、通常は問題なく借りることができるはずです。まずは、お取引のある金融機関に相談してみてはどうでしょうか。
そして、家を買うかどうかについては、これからのライフスタイルによって判断していくのがよいと思います。
持家になると転居などがあった場合に、売却したり他の人に貸したりと手続きがめんどうになります。また、家族構成が変わると住み替えが必要になることもあります。
マイホームは自分の夢をかなえる大きな目標という方もいますが、一方で、将来のライフスタイルを制約する要因になりかねないのです。
日本は「家あまり」
また、日本の住宅事情も考慮する必要があります。日本の人口は一部の都道府県を除き減少し、住宅地の地価も東京など一部の都市以外では値下がりが続いています。貸家の空室率も全国で20%近くになっており、いわゆる「家あまり」の状態です。
マイホーム購入後、ローンの返済を続けて自分の家を手に入れても、不動産価格の下落によって価値が低下する可能性があります。また、このような借り手優位の状態であれば、持家よりも賃貸の方が経済的に有利になる状況も考えられます。
このように考えていくと、マイホーム購入をすすめられるのは、将来にわたってある程度のライフスタイルを見通すことができて、かつ不動産価格の将来についても理解したうえで、「それでも自分の家がほしい」と思っている人に限定されるといえるでしょう。
「住宅購入は慎重に」
賃貸住宅の難点は、思い通りの家に住めないことや、所有欲を満たすことができない点です。
一方で、いつでも引っ越しができるのでライフスタイルの変化に柔軟に対応でき、住んでいる家が古くなったり、気に入らなくなれば移動できます。
また、住宅設備にトラブルが発生したときも、マイホームであれば自分で修理費用を負担しなければなりませんが、賃貸であれば通常の使用状態で借主に責任がなければオーナーの負担になります。
天井から雨漏りすると、マイホームであれば「修理費用がかかるなぁ」と悩むことになります。しかし、賃貸なら「オーナーに早く言って修理してもらおう」と、まったく違った対応になるのです。
所有するということは、それだけメンテナンスにもコストがかかるということでもあります。ローンを組むことが可能になったとしても、マイホームを購入するかどうかは慎重に考えることをおすすめします。