はじめに

消費税が増税される10月1日まで残り1ヵ月を切り、増税による消費の停滞が懸念されています。

今回は「軽減税率」も導入される予定で、酒類などを除く食料品の消費税率は8%で据え置きとなります。このため、「税率の低い食料品を購入して、外食を控えるのでは」という意見があります。

確かに、価格に敏感な層がそのような行動を取るケースもあるとみられます。しかし、いちよし経済研究所では、その影響は軽微で、中には消費増税がビジネスチャンスになる外食企業も出てくる可能性があると考えています。


前回増税時の影響は軽微だった

前回の消費増税の時(2014年4月)を振り返ってみると、百貨店の売上高は同年3月が前年同月比25.4%増、4月は同12.0%減、5月は4.2%減。ショッピングセンターの既存店売上高は3月が同11.4%増、4月は同4.8%減、5月は同0.4%減と、消費増税の駆け込み需要とその反動が続きました。

前回増税時の影響

一方、日本フードサービス協会のデータを見ると、全店売上高は2014年3月が同2.4%増、4月は同3.1%増、5月は同3.9%増。消費税の影響は軽微だったといえます。

このような前回の増税時の状況に加えて、以下の3つの理由から、外食業界に対する今回の消費増税のインパクトは軽微になると考えています。

1つ目は、10月から幼児教育・保育の無償化も併せて行われること。2つ目は、飲食店の一部でキャッシュレス・ポイント還元制度(2020年6月まで)が適用されること。3つ目は、外食のイートイン(店内飲食)の消費税率は10%である一方、テイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(宅配)の消費税は8%のままであることです。

幼児教育無償化が外食のプラスになる?

2019年10月から、日本でも幼児教育の無償化が始まる予定です。3~5歳児は全世帯が対象で、認可保育所や認定子ども園などの利用料が無償となり、幼稚園や認可外施設、幼稚園の一時預かりなどは月額の上限内で無償となります。

幼稚園の場合(3~5歳)は月に2万5,700円、認可外保育サービスの場合は月に4万2,000円(0~2歳)、3万7,000円(3~5歳)までの範囲で無償化されます。また、幼稚園の預かり保育を利用する場合、自治体から保育の必要があると認定されれば、月1万1,300円を上限に利用料が補助されるというものです。

厚生労働省によると、0~5歳時で保育園に通う児童数は226.5万人、幼稚園に通う児童数は155.9万人。いちよし経済研究所では、270万~300万世帯がこの恩恵を受けると予測しています。これは全世帯の6%程度に当たります。

同省がまとめた「平成30年 国民生活基礎調査」によると、2017年の世帯収入の平均は551万円(中央値は423万円)。幼稚園児を持つと推測される世帯主が29歳以下の世帯収入平均は376万円、世帯主が30~39歳以下の世帯収入平均は574万円です(注:1人当たりの収入ではありません)。

この世帯主39歳以下の層が年間30万~50万円の可処分所得が増えることは、消費に大きな意味を持つとみられます。

一部が貯蓄に回るとみられ、すべて消費に回るとは考えられませんが、支出として子供関係(習い事、子供服)などへの消費や、子供を連れていきやすい「サイゼリヤ」「ガスト」といったカジュアルレストラン、「マクドナルド」などのファーストフード、「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」のような回転寿司で食事するケースが増えるとみられます。

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