はじめに

灰原に学ぶ「信用残高」の重要性

次は(2)の「取引の持ちかける内容が信用残高に見合っていない」です。売ろうとしているモノやサービスの価格が、信頼残高の量より低い場合は売れません。銀行は融資の際、担保の換金額から融資額を決定します。担保となりうる信頼残高の額を超えた金額の決済を求めても、相手方は応じてはくれません。

自分では500万円分の信頼があると思っていても、実際には100万ほどの信頼しかないと思われていれば、200万円分の決済も通りません。人と人の間には目に見えない信頼残高の口座が必ずあり、この残高量によって取引がすべて決まっているのです。

ここで、完全に信頼残高の見積もりを見誤ったケースをご紹介します。『ナニワ金融道』コミックス8巻で、帝国金融社員の主人公・灰原は、融資先に最もキツい裏切りを受けます。

この時、灰原は、困った山川さん(帝国金融からお金を借りた側)からのお願いで、家に帰れない家族3人を自宅に泊めてあげました。また、灰原の彼女の朱美さんは保険金の上積み300万円もしてあげました。そこまでしたのだから裏切らないはずと、灰原は追加で融資の提案さえしました。

しかし灰原は、山川さんの親戚からの提案より簡単に裏切られました。相手の信頼残高を見誤って取引に踏み切って、失敗したのです。町の金貸しよりも、親戚に対する信頼残高が勝る形でした。このように、金額が大きくなればなるほど、信頼を適切に積み上げておかないと、決済は最後まで完了しません。

灰原のケースは、土地がいずれ3億円になるという巨額の決済に対し、相手の灰原に対する信頼残高の量がそこまで達していなかったケースではないでしょうか。

営業マンが最も犯してはならない失敗

最後に(3)の「アフターケア」です。売ったモノやサービスが常に成功し続けるという、うまい話はなかなかありません。売った側の不満が発生することもありますし、クレームや損害賠償によって、売った金額以上の損失を招くこともあります。商品の説明やケアは必須です。

逆に、「売っておしまい」という言葉もあります。この言葉は、 売って信頼残高がゼロ以下になるために、営業マンから連絡ができない気持ちになることを表した言葉でもあります。

営業マンから連絡できないような関係を生み出してしまう。これはアフターケアを主体的 にできない状態のことです。私は、これが“営業マンが最も犯してはならない失敗”だと考えています。

再び『ナニワ金融道』を見ましょう。コミックス5巻で、灰原は肉欲棒太郎という青年に融資しながらも、裏で相手を破産させます。それなのに、力強いメンタルでノコノコと肉欲さんの夜逃げの現場におもむきます。

通常は、顔を見るのも怖いほどの状況。肉欲さんに対するアフターケアの主体性は、もはや笑えるレベルです。

結果、肉欲さんは変に暴れることなく、自分の想いのこもったビルを灰原に受け渡して去っていきます。このように「結果が出た」「売り切った」と思った後も、「売っておしまい」ではなく、主体的に相手に会いに行ける営業マンこそ、アフターケアができている人です。

今回は、営業のできなかった若い頃の自分を省み、3つのポイントをまとめました。『ナニワ金融道』のケーススタディと『サラリーマン金太郎』の仕事におけるスタンスは、学ぶものしかありません。全巻読むことを強くお勧めします。

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