はじめに

貯蓄は生活費の7.5ヵ月分を最低限の目標に

気持ちの面だけではなく、貯蓄がないことは「生活防衛資金」がないことにもなります。

例えば、今、相談者さんがケガまたはご病気で、入院と療養が必要になったとします。今入っている保険である程度の医療費はカバーできるかもしれません。ですが、生活費となるとどうでしょうか。相談者さんの生活費の面倒を見てくれる人はいません。ですからご自分で準備しておかなくてはいけないのです。

イレギュラー支出を含め、そういった生活費として毎月の生活費の1.5ヵ月分、生活防衛資金として最低でも6ヵ月分を持っていれば、不測の事態が起きても生活を立て直せるのではないかと考えられるのです。心配であれば、10ヵ月分でも1年分でもよいのですが、そういった自分のための資金はすぐに下ろせる口座で、しっかり持っておくことをお勧めします。

実は、万が一病気やけがをしても、健康保険適応の治療なら国の医療費制度の中の「高額療養費制度」が利用できますし、会社を休むと「傷病手当金」を受けられるケースも多いと思います。

そこにさらに保険金が出れば、貯蓄はなくてもいいという場合もあるでしょうが、こればかりはその時になってみないとわかりません。

そういう意味でも備えていてほしいのです。これが、貯蓄と返済を並行して欲しいと思うもう一つの理由です。

返済だけではなく、貯蓄や自己投資にも目を向けて

今後の収入がどうなるかについてですが、男性の場合は平均を見ると「定年まで上がる」というデータもありますが、一方で「50代後半に役職定年になり、大きく下がる」というケースも多くみられます。

つまり、ご自分が働いている会社の仕組みにより個別に異なるということです。ご自分の会社の先輩に聞くなど、情報収集をしてみてもよいと思います。

仮に、今後下がっていくとすると、やはり頼りになるのは貯蓄です。会社が確定拠出年金の掛け金を出してくれているということなので、現在企業型の確定拠出年金をしているのだろうと思いますが、規約を確認したうえで、個人型の確定拠出年金(iDeCo)を始めて、老後資金をよりしっかりと準備するのもよいでしょう。

もし規約で、iDeCoが利用できないのであれば、つみたてNISAという運用益非課税の制度を利用してもよいと思います。20年間という長期間、非課税運用ができますから、こちらもお勧めです。

相談者さんは、今は返済ばかりに目が行っていますが、定年までに自分の仕事に力をつける、人脈を作るような自己投資はしていますか?

必ずしも必要ではないかもしれませんが、仕事の幅を広げるには、自分以外の他者の意見や考え方を知ることも大きなヒントになります。そのためにも、返済への気持ちは少し抑え、貯蓄をしたり自己投資をしていくようにすると、また違った気持ちを持ているようになるかもしれません。

なにより貯蓄がしっかりあれば、住宅ローンも老後資金も不安ではなくなるでしょう。バランスを考えつつ、取り組んでみてください。

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