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「台風19号」関連銘柄に投資することの倫理的・経済的意味を考える

災害時の株取引を擁護することは詭弁か

先月は台風19号が日本各地に大きな被害をもたらしました。被害にあわれた方々には、心からお見舞い申し上げます。

台風19号が過ぎた翌週の株式市場では、さっそく「台風19号関連銘柄」の物色が始まりました。建機レンタルのカナモト(証券コード:9678)や、列車の部品を製造する東洋電機製造(6505)といった銘柄が値上がりしたのです。

このような銘柄の紹介は、被災地への配慮そっちのけで、災害を利用して金儲けをしようと受け取られる可能性もあり、批判の対象となることが多々あります。特に今回のように甚大な被害をもたらした台風を手がかりに株取引をしていると、「災害に乗じて利益を上げるとは、けしからん」と非難する人も少なくなさそうです。

それでは、台風のような自然災害を手がかりにして株取引をすることは、はたして本当に問題がある行動なのでしょうか。筆者は自然災害時に株取引を自粛することによって、かえって経済がマヒしたり、復興が遅れたりするリスクがあるのではないかと考えます。


災害を手がかりにした株取引の妥当性

通常、災害関連銘柄は実際に被害が明らかになってから上昇することが多いですが、今回の台風19号のケースはやや特殊でした。9月の台風15号が千葉県内にもたらした被害の大きさから、襲来前の時点で台風19号でも各地に大きな被害が出てくるのではないか、という思惑が先行していたのです。

特に目立った動きを見せた銘柄は、コンクリート製品を取り扱うイトーヨーギョー(5287)。同社は、台風が上陸する直前の10月9日と10日にストップ高となり、先週の始値1,030円から一時2,455円の高値をつけ、売買代金も大きく伸ばす形となりました。

台風のような自然災害は、一般的に建設業界などで一過性の需要増加が見込まれる事象です。災害対応の過程で品質やサービスが評価され、長期的に業績へプラスの影響をもたらす可能性も、否定できません。

しかし、災害の直前・直後といった思惑ベースの株取引は、どちらかといえば「短期的な取引」に分類されるといってよいでしょう。短期的な取引というと、悪い文脈で用いられるケースが多く、良いイメージを持てない方も多いのではないでしょうか。

過度な自粛ムードが生むかもしれないリスク

本質的な原因としては、こうした取引が市場や企業の成長といった“長期的な視点”で売買を行っていないことにあるのかもしれません。一般的に短期的な取引といえば、ある話題を手がかりにして市場参加者同士で利益を奪い合う「ゼロサムゲーム」であると、長期投資家からは認識されているようです。

このように考えると、台風という天災を手がかりに短期的な株取引することは「不謹慎である」と言われてもおかしくないかもしれません。しかし非常時に、倫理的に問題があるとして株取引を全員が自粛してしまえば、災害復興にも影響が出てくる可能性があります。

歴史的に最も権威ある経済学者の1人であるジョン・メイナード・ケインズの考え方からすれば、「投機」と「流動性」は切っても切れない関係にあるといえます。市場から株取引がなくなれば、株式の流動性はなくなり、現金化することが難しくなるのです。

株式市場において最も重要な要素の1つが、この流動性です。流動性が枯渇すると値動きが非常に激しくなり、まともに売買することが難しくなります。このようなリスクを「流動性リスク」といいます。

ひとたび流動性リスクが発生すると、真っ先に流動性を供給するのは比較的短期的な取引を行う人たちです。

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