非常時の株取引は市場の潤滑油になる?

たとえば、災害で大きな被害を受け、ある企業の操業が難しい状態になった時、長期スタンスの投資家はほとんどの持ち株を売るという行動に出るでしょう。このように投資判断が一方に偏ると、市場では売り注文の比率が高まってしまい、いきすぎた株価の下落をもたらすかもしれません。

こうした時、短期的な取引を行う人の中には、移動平均線などを用いたテクニカル指標や板注文の動向から、「下がりすぎなので買う」という行動を取る人もいます。この短期的な買い注文は市場の流動性を高め、投資家が持ち株を現金化するために役立つのです。

誤解されやすいことですが、下がっている銘柄に対して空売りを行う場合も同様です。現物株式であれば、みんなが現物株を売ってしまえば、市場は下がりっぱなしになってしまいます。

しかし、信用取引における空売りの場合は、原則として買い戻さなければボジションを清算できません。つまり、空売りは将来の買い圧力となり、下落後の反発を牽引し、市場の潮目を変えることもあります。

災害関連株を買う、もう1つの意義

株式市場の本質的な役割である資金調達手段に立ち戻って考えても、台風を手がかりにした株取引は意義があるといえるでしょう。

冒頭で取り上げた建機レンタルのカナモトや、列車部品の東洋電機製造のように、台風がきっかけとなって注目され、取引高や株価を上昇させる企業もあります。取引高の増加は流動性の高まりを意味し、流動性リスクが低下します。

流動性リスクが低下すると、投資家は比較的安心して株を購入することができるため、企業価値が増加する可能性があります。ちなみに、専門用語ではこのようなことを「流動性プレミアムが減少した」と表現します。

株価の上昇や流動性プレミアムの減少によって、企業価値は高まります。企業価値が高まると、その企業が借り入れをしたり、設備投資をしたりするうえで有利な条件となる場合があります。

このように考えると、台風によって需要増加が見込める企業の株を購入することは、最終的にその行動の結果が被災地や被災者に還元される可能性もあり、絶対的悪であるとは言い切れません。

台風という自然災害を手がかりに株取引をすることについて、罪悪感を覚えたり、憤ったりすることはあるかもしれません。しかし、過度な自粛ムードによって、市場の流動性が断たれてしまったり、復興関連企業に資金が回りづらくなってしまったりすれば、自粛することがむしろ、復興の道のりを遠ざけてしまうことにもなりかねません。