はじめに

11月に入ってから米国を中心に世界的な株高が続き、11月4日にダウ工業株30種平均は史上最高値を超えました。欧州株(Stoxx600)も2018年1月の高値を上回り、米国株に遅れながらも史上最高値に近づいています。

世界的な株高のドライバーは、米中通商協議において追加関税が先送りあるいは撤回されるとの期待、10月末が期限だった英国のEU離脱が延期され「合意を伴う離脱」が実現する見通しが強まった、ことなどから、投資家心理の悲観が和らいだことです。

一方、株式や長期金利の趨勢的な方向性を決定するのは、米国を中心とした世界経済の動向です。株高の背景には、米国経済がこれまで年率2%前後の底堅い成長を続けていることがあります。


なぜ米国経済は底堅いのか

米国では、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ転換期待で、年初から住宅販売が回復したほか、耐久財の消費も下支えされました。さらに、2019年から政府による投資拡大を受けて、建設セクターなどの成長が底上げされました。

実際に、11月1日に発表された10月分の雇用統計では、雇用者数は高い伸びが保たれていました。米国は「完全雇用にある」と言われて久しいですが、雇用拡大が個人消費を増やす経路はなお強く働いています。

こうした状況への評価はさまざまですが、「2018年まで利上げを続けたFRBが(トランプ政権からの圧力もあって)素早く金融緩和に転じたこと」と「拡張的な財政政策」という金融・財政政策の組み合わせが功を奏した、といえるでしょう。だからこそ、中国への強硬な通商政策を続けながらも、十分な経済成長が実現できたというわけです。

FRBは7月から3会合連続で利下げを行いました。そして10月には、国債買い入れを増やしバランスシートを拡大させる対応を明確にしました。これについてFRBは、短期資金のやり取りを行う市場での金利上昇を抑制するためであり、量的金融緩和ではない、と説明しています。

ただ、FRBのバランスシート拡大を通じて金融市場に流動性が十分に行き渡るようになるため、これは景気刺激的に作用します。7月に利下げを始めてもなお引き締め気味だったFRBの政策は、本格的に景気刺激的に機能し始めたと判断されます。

<写真:ロイター/アフロ>

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