はじめに

判断指標を設けて投資スタンスを明確に

では、ご相談のケースの場合、どのように考えたら良いのでしょうか。

つみたてNISAを利用するために、ロールオーバーが使えない前提で考えた場合、今後、今以上に相場が上がると想定するのであれば、課税口座に移管するメリットは出てきます。

ただし相場については、ご相談者も述べている通り、予測不可能です。ですので、運用をする際に重要なのは、自身の投資スタンスを決めることです。

誰もが値上がりを期待します。そうすると、利益が出ている時こそ、もっと上がるのではないかと、売却時期を見失ってしまうことになります。その結果として、相場の流れが変化し、場合によっては評価損になってしまうということもでてきます。そういったことを避けるために効果的なのは、“15%増えたら利益を確定する”“5%減ったら損を確定する”など、自分なりに売却する際の判断指標を設けることです。これを設けることで、大幅な機会損失を避けることができます。

投資の判断指標は何を基準に決めるべきか?

では、自分なりの指標をどう置けばよいのでしょうか。

それは、運用目的とリスク許容度によって変わってきます。ご相談者の場合、老後に備えるためということですが、理想の生活を実現するために、リタイアまでにどれくらいの資金準備が必要なのか、そして、そのためには何%くらいの運用を目指す必要があるのかをライフプランから算出する必要があります。

また、人それぞれリスクに対する許容度は異なります。お金を増やしたいあまりに、必要以上にリスクを取ってしまうと、精神的に不安を抱えてしまい、生活がままならないなんてことも出てきてしまいます。ご自身のリスク許容度に合った運用方針を定めるのが重要です。

自営業が老後に備えるために活用したい「2つの制度」

ここまで、一般NISA及びつみたてNISAの活用を前提でお話してきましたが、ご相談者は自営業とのことですので、老後のための積立てという資金性格と、税制面でのメリットを考え、「小規模企業共済」と「iDeCo」の活用を検討されてはいかがでしょうか。

「小規模企業共済」とは、企業の経営者や個人事業主のための積立てによる退職金制度です。掛金は年間84万円まで全額所得控除でき、高い節税効果が見込めます。

また、「iDeCo」は老後資金を作ることを目的とした制度で、積立てた掛金の全額所得控除及び運用益の非課税などのメリットを享受できます。

ただし、iDeCoの目的はあくまで老後の資金のため、60歳まで引き出すことはできないので、60歳以前に必要な資金までiDeCoを活用すると、使いたいときに使えないということになり、注意が必要です。

一般NISAとつみたてNISAを併用することはできませんが、iDeCoは併用可なので、ライフプランを立てたうえで、“60歳以降のための資金”と区切れるのであれば、つみたてNISAよりiDeCoの活用の方が、節税メリットが出るケースもあります。

今回はNISAの対応についてのご相談でしたが、より視野を広げることで、選択肢は広がります。運用で増やすことだけを目指すのではなく、税金面でのメリットや、資産を守ることなどを含めて、理想の老後生活実現のために最適な選択肢を選んで欲しいと思います。

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