はじめに
時計はビジネスマナー?
――ただ、「こういう場面ではこんな時計を着けるのがビジネスマナーだ」などと、上司や先輩に言われたことのある人もいると思います。実際に守る必要はあるのでしょうか?
広田:今や、ビジネスマナーとしての時計の着用も無くなったと思います。ビジネス上、着ける意味が全く無いわけではない。ただ、着けていないことをとがめる人ももういないでしょう。逆に、今は時計を「自由」に着けて良い時代なのだと思います。
そして、マニアの言うことはあまり聞かない方がいいです(笑)。私も同じなのですが、いっぱい時計を持っていて毎日付け替えているんですね。だから自分に合う、合わないと言うことに対して「甘く」なっている傾向がある。
それよりも、初心者は自分の腕にしっくりくるかどうかを大事にした方がいいです。極端な話、時計好きな人間にならないまでも、身に着ける物なので、「触って気分が良いかどうか」を大事にしなくてはいけません。こういった身体感覚は時計に限らず、衰えてきている気がしますね。
――高級時計も気楽に楽しんでよいのですね! ただ、ビジネス書などではいまだに「仕事ができるようになりたい営業マンは、高い時計を着けるべき」といった主張も目にしますが……。
そういう考え方もあるし、何となくそれで自信が付けばいいと思います。でも、時計はしょせん、時間を見るための道具です。ゆるい感じで付き合えばいいと思う。そして特に「流動性」が高い、どこにでも持って行きやすい物ですから、楽しみやすいですよね。車やゴルフなどとも違う趣味として、「あり」だと思いますよ。
広田雅将(ひろた・まさゆき)
時計ジャーナリスト。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。共著に『ジャパン・メイド トゥールビヨン-超高級機械式腕時計に挑んだ日本のモノづくり-』(日刊工業新聞社)、監修作品に『100万円超えの高級時計を買う男ってバカなの? 』(東京カレンダーMOOKS)など。