はじめに
100人に1人の妊婦が多胎児の母に
多胎児は不妊治療の影響などもあって増加傾向にあり、厚生労働省の「人口動態統計」によると、現在は毎年およそ100人に1人の妊婦が双子以上の多胎児の母親になっています。
多胎家庭では、多大な育児負担を保護者が担っている状況があり、ある多胎家庭では、1日のオムツ替えは28回、授乳は18回にも及んだそうです。
2018年には、愛知県豊田市の三つ子の母親が、泣き続ける次男を畳の床にたたきつけて死なせる事件が起こりましたが、三つ子の育児で鬱状態になった母親に対して寛大な判決を求める声が上がっていました。
母親には19年3月に懲役3年6ヶ月の判決が言い渡され、被告側は控訴しましたが、名古屋高裁は控訴を棄却しています。
ベビーシッターを頼みたくても高額でためらう
11月7日に厚生労働省で行なわれたフローレンスの記者会見では、実際に双子を育てている母親と、三つ子を含む4人の子供を育てている夫婦が、それぞれ子供を連れて登壇。
双子を育てている角田さんは、「夫は仕事で終電まで帰ってこず、育児は長いトンネルの中にいるようでした。そんな私を救ってくれたのは保育園の入園通知でした。事件を起こしてしまった三つ子のお母さんも、もし保育園の入園通知が届いていれば、犯行を思いとどまったと思います」と涙ながらに訴えていました。
多胎児家庭は、特に車のない家庭では外出が困難になりがちで、ベビーシッターなども、人数分で高額になるため、ほとんどの母親は使用を思いとどまります。
保育園は母親の就労が大きな認定要素であるため、多胎児家庭であっても母親が専業主婦の場合、なかなか入れません。一方で、就労して保育園に入ることができても、頻繁に子供が体調を崩し仕事を休まなければならなくなるなど、多胎児の母親が安定して働くには絶望的に困難な状況があります。
フローレンスでは、行政に対する要望として、保育園の必要性認定に「多胎児であること」を入れることを求めています。また、現在ほとんど機能していない、「居宅訪問型預かり制度」、つまり家にシッターさんが着てくれる形の預かりサービスの拡充も、同様に行政に訴えていくといいます。
多胎育児の大変さを伝える声は、ツイッター上でも #助けて多胎育児 のハッシュタグで挙げられています。
今回のアンケートでは、「どのようなサポートがあれば気持が和らぐか?」という質問に対し、「家事育児の人手」「金銭的援助」「子を預ける場所」「同じ立場の人との交流」といった声が挙がっていました。
多胎育児には社会のサポートが不可欠
多胎児家庭の置かれている状況の困難さを考えるに、乗り物のなかで子供が泣き出すとあからさまに迷惑顔をする人がいるといった、子育てする母親に冷たい社会に日本がなってしまっていることも、大きな要因であるように思います。
少子高齢社会の中、多胎児の母親はもっと大切に、暖かく扱われてしかるべきです。親族やお隣さんの助けに頼るといった、昭和のような時代ではなくなっている以上、地縁血縁に代わるサポート体制を構築し、社会全体で多胎児の家庭を支えていくような体制を形作っていく必要があるのです。