はじめに

東京で運命の出会い

卒業後は渋谷区の総合病院に研修医として就職しました。「都心部にあって、残業が少ない」ことを基準に選んだ病院でしたが、男性医師のほとんどが既婚者だったのは想定外でした。それでも、東京都内の私立H医大から毎週木曜日にやってくるバツイチ整形外科医の千田先生と懇意になりました。

亜由美先生、実はG医大時代に同級生の彼氏がいました。しかしながら、彼氏は地域枠医学生で、卒後9年間はG県内での勤務が義務付けられます。「遠距離恋愛で彼氏をキープしつつ、東京で新しい出会いも探す」という作戦でしたが、ブランドに詳しくスマートな千田先生に夢中になり、やがてG県の彼氏はフェードアウトしました。

夢は、ゆるふわママ皮膚科だったけど……

千田先生は毎週のように亜由美先生のマンションに泊まるようになり、誕生日にはヴァンクリの指輪をプレゼントされました。亜由美先生は結婚出産後を視野に入れて、3年目以降の専門研修病院は、「子育て支援制度が整った東京都内の皮膚科」を探すことにしました。

最初はH医大皮膚科を考えたけど、千田先生に「ウチは内部受験生で枠が埋まった」と言われて、定員枠の多いD医大皮膚科から内定をもらいました。とはいえ、「H医大皮膚科の二次募集ないかな」とH医大関係者のSNSを巡回していると、「千田先生、次男誕生おめでとうございます」の衝撃的なメッセージが。

さらに検索すると、千田先生には妻子があり、妊娠中の奥様は上のお子さんを連れて静岡県の実家に長期滞在しているようです。慌てて千田先生を問い詰めると、「同姓の別の先生」「実は、離婚寸前で別居中」「単身赴任って言ったのにバツイチと勘違いした」と、コロコロ説明が変わります。

傷心の亜由美先生は、G県のモトカレに連絡を取ろうとSNSを検索しますが、飛び込んできたのは「G県地域枠の後輩女医と婚約」というメッセージでした。