はじめに
今は「おいしくて当たり前」の時代
本では「投資」としてラーメン店経営を薦めている藏本さん。では、「儲かる」ラーメン店に不可欠な要素とは?
「ラーメンにかぎらず、飲食店の場合、半分くらいは立地で決まってしまいます。というのも、今、まずいラーメンってほとんどないと思うんですよ。昔は汚くて驚くほどまずいラーメン屋というのがありましたが、今は"おいしくて当たり前"なんです」
消費者の目も肥え、またインターネットによってそのお店に対する人々の評価がオープンに共有されるようになった結果、「おいしくない」店は生き残れなくなりました。一定上の味の水準に達していることは前提条件となっているのです。
「味」による差が生まれにくくなっている現在だからこそ、店を出す「場所」が非常に重要だと藏本さんは力説します。
「儲かるための条件は、60%が立地であとは“人”です。路地裏の名店というのは今でもありますけど、今から始めるならそこで勝負するべきではない。人目について利便性が高い場所じゃないと、売上が作れないですから」
ラーメンの原価率は?
しかし立地がよく、人通りもにぎやかな場所となるとどうしても家賃は高くなります。それでも儲けようとするには、ラーメンそのものの価格設定も重要になってきます。最近では1杯1,000円超えも当たり前になってきたラーメン業界ですが――。
「僕が手掛けている店の場合、原価率は30〜32%。それが40%までいっちゃうと、普通にやっていたら経営が成り立たない。ただ、原価率を低く設置しようとすると難しいのは販売価格です。(30%なら)1杯1,000円で売れば300円までかけられるけど、それだと高すぎるんじゃないかと思います。今、牛丼がワンコインで食べられる時代にラーメンだけが1,000円って、なんでそんなに高いの?って思ってしまう」
1杯あたりの価格が上がっているということは、そこに使われている材料の値段が高くなっているということ。確かにこだわり抜いた食材をアピールするラーメン店も数多くあります。しかしそれは「おかしいと思う」と藏本さんは言います。
「高くなっているのは完成度の高いラーメンが好まれるようになった結果です。○○産の魚介とか、ブランド豚とか、いい材料を使わないといけなくなっちゃうから高くなる。ラーメンというカテゴリに限っては、そんな必要あるのかなって僕は思いますね。本当はもっと庶民の食べ物だったはずですから」
もちろん食べる側からすればおいしいに越したことはありませんが、藏本さんの「ラーメンは庶民の食べ物」という言葉には納得も覚えます。こだわりすぎることでラーメン本来の立ち位置からずれてしまっているのではないか……。ラーメン店の立ち上げに命を懸けているからこそ感じる違和感がそこにはあります。