はじめに

都市開発で日系企業にも恩恵か

そして3つ目の理由が、スマートシティ構築の動きです。

ASEANは、昨年の議長国・シンガポールの下で、持続的な都市開発を目指す「ASEANスマートシティ・ネットワーク(ASCN)」の構築で合意しました。ASEANの企業は域外企業と協業し、2025年にかけてスマート化を推進していく計画です。

加盟諸国では今後、急速に都市化が進み、2030年までに新たに9,000万人が都市人口に加わると予想されています。これに伴って生じる交通渋滞や水質汚染、貧困、格差拡大など、さまざまな都市問題を解決するために、ITなど先端技術を活用する「スマートシティ」として域内26都市を選定。ベトナムではホーチミン、ハノイ、ダナンが選ばれました。

こうした動きを受け、日本は10月8~9日、横浜市で日ASEANスマートシティ・ネットワーク・ハイレベル会合を開催。大手メーカーや商社、プラントエンジニアリング、銀行など幅広い企業、約200社・団体が参加する「スマートシティ・ネットワーク官民協議会」を立ち上げました。

渋滞緩和やキャッシュレス決済、インフラ建設などの需要を取り込むため、政府がノウハウを持つ日本企業を個別に支援していく方針です。

株式市場では都市開発銘柄が好調

ベトナムでは、すでにさまざまなスマートシティのプロジェクトが立ち上がっています。ハノイ近郊のニャッタン橋北側に広がる開発エリア(272ヘクタール)は、住友商事が現地大手企業と組んで開発を担うことになりました。

同社は10月7日、都市化に加え、5Gや顔認証、ブロックチェーン技術の導入によるサービス高度化も図るスマートシティ開発事業の立ち上げを発表しています。近い将来には、ハノイ市街地からノイバイ国際空港まで延びる地下鉄が、同開発エリアを通る計画です。

株式市場では、具体化し始めたスマートシティ構想に関わる新規事業への期待を反映し、都市開発関連企業のパフォーマンスが足元で良好となっています。

折しもベトナムは2020年にASEANの議長国を務めます。グエン・スアン・フック首相は11月4日、今年の議長国・タイからの議長国ポスト引き継ぎ式典において、2025年までのASEAN共同体ビジョンの遂行などに積極的に取り組んでいく姿勢を明らかにしました。財・サービスの単一市場を目指すASEAN統合に一層の弾みがつくと予想されます。

<文:シニアストラテジスト 山田雪乃>

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